Eros, Cupido

フランスの画家、ジャン・ジュール・アントワーヌ・ルコント・デュ・ヌイ(Jean-Jules-Antoine Lecomte du Nouÿ/1842-1923)による1873年の作品「Eros, Cupido」
作者の名前は長いけれど作品のタイトルはじつに簡潔「エロース・クピド」
ギリシア神話ではエロース、ローマ神話ではクピドと呼ばれている、天使の姿をした愛の神。
美の女神アフロディーテの息子であり、ラテン語で愛を意味する「アモル」の名で呼ばれることもあります。
背中に大きな翼を持つアモルが弓に弦を張っているシーンですが、150年近くも前の作品にしては前衛的ですね。
舞台セットのような構図や、背景に文字が書かれているところなど、絵画というよりも映画のポスターのよう。
作者のルコント・デュ・ヌイは1842年、フランスのパリに生まれました。
兄はのちに建築家となりますが、彼は子供の頃から視覚芸術に強い関心を示し、6歳のときすでに父親と叔父の肖像画を描いています。
1861年、19歳の時にスイス人画家シャルル・グレールのアトリエに入り、グレールから創造的な表現を学びました。
その後アカデミック美術の代表的な画家であるジャン=レオン・ジェロームの指導のもと、芸術の知識と技をより高めていきました。
1863年にパリのサロンでデビューした彼はその後も定期的に作品を出展し、1866年に金メダルを獲得します。
1872年にはローマ大賞を受賞し、美術館での展示や教会での装飾も成し遂げています。
その後は東アジア、ギリシャ、トルコ等を旅して外国文化の社会的、歴史的、文学的側面に触れ、そこからインスピレーションを得ています。
彼の絵にある特徴的なオリエンタリズムは、この旅によるところが大きいのでしょう。
たしかにこの作品も、どことなくオリエンタルな雰囲気がありますね。
草花で髪を飾り、金色の装飾品を身に付け、翼が青や黄色なところはそれまでの天使像とは違う雰囲気を感じさせ、性格さえ違うような気もしてきます。
でも股間を隠さないところは、やっぱり天使だなって思いますが。
このアモル君、人間の歳でいうといくつくらいでしょうか?
そろそろ弓矢を自分のために使いたくなってくる年頃かもしれませんね。
作者のジャン・ジュール・アントワーヌ・ルコント・デュ・ヌイは晩年をルーマニアで過ごしましたが、亡くなる直前にパリに戻り、1923年2月19日に死去しました。
パリの街のある通りには、彼の名にちなんだ名前が付けられているそうです。
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