
イタリアの画家、ジョヴァンニ・バッティスタ・チプリアーニ(Giovanni Battista Cipriani/1727-1785)による絵画2点。
英語でのタイトルは左が「The Education of Achilles」右が「Chiron Instructing Achilles in the Bow」で、どちらも1776年頃の作品です。
立派な髭をたくわえた男性が少年に槍投げと弓矢を教えているところですが、よく見るとこの男性、下半身が馬です。
馬並みではなく、本当に馬。
少年は体付きからすると10代半ばといった感じですね。
スポーツの指導は手取り足取り、いろんなところを取りながら教えるものですが、現代では当人そっちのけで第三者がセクハラだのパワハラだとの騒ぐことがあるので大変です。
この絵は神話の世界なのでふたりとも裸ですが、きっと良い師弟関係なのでしょう。
さてこのふたりはいったい誰なのかと言いますと、おっさんのほうはギリシア神話に登場する半人半馬の怪物、ケイローン。
ペリオン山に住み、死後は天に召されて射手座になったと言われています。
ケイローンは農耕の神クロノスと精霊のピリュラーのあいだに生まれました。
父クロノスが浮気をして、妻の目を逃れるために馬に姿を変えてピリュラーと性交したため、このような姿で生まれてしまったそうです。
一般に野蛮で粗暴だと言われている半人半馬のケンタウロス族の中でケイローンは例外的な存在であり、賢者として知られています。
彼はヘラクレスやカストール、イアーソーンなどの英雄たちに武術や馬術を教え、アスクレピオスには医術を授け、そして少年期のアキレウスの教育係でした。
この絵に描かれている少年こそが、そのアキレウスです。
アキレウスはプティーアの王であるペーレウスと、海の女神テティスとのあいだに生まれました。
生まれるとすぐ母テティスは息子を不死身にするため、彼のかかとを持って冥府を流れるステュクス川の水に浸します。
ステュクス川の水は生き物を不死にする効力があり、このことでアキレウスは不死となるのですが、テティスの手が彼のかかとを掴んでいたため、かかとだけは水が浸からず不死とはなりませんでした。
その後、テティスがアキレウスを養育しなかったため、父ペーレウスはアキレウスを賢者であるケイローンに預けます。
ケイローンはアキレウスの養育および教育係として、アキレウスを立派な勇者へと育て上げました。
後にアキレウスはトロイア戦争においてミュルミドーン人を率いて50隻の船と共に参戦し、たったひとりで敵の名将を討ち取るなどの大活躍を見せます。
しかし戦争に勝利する前に、唯一の弱点である足のかかとを矢で射抜かれてしまい、命を落としたのでした。
アキレウスはラテン語では「アキレス」
足のかかとからふくらはぎにかけての腱を「アキレス腱」と言いますが、これは彼のこの故事に因んで名付けられました。
今回は登場人物の説明だけで長くなってしまったので、作者であるジョヴァンニ・バッティスタ・チプリアーニについてはまた今度。(^-^)/
画像出典:ウィキメディア・コモンズ
File:Giovanni Battista Cipriani - The Education of Achilles, 1776.jpgFile:Giovanni Battista Cipriani - Chiron Instructing Achilles in the Bow, 1776.jpgライセンス:パブリックドメイン
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