Peace

    edward_onslow_ford-peace.jpg

    イギリスの彫刻家、エドワード・オンスロー・フォード(Edward Onslow Ford/1852-1901)による1887年の作品「Peace」

    オリジナルは高さ約60cmの像で、1887年に王立アカデミーにて展示されました。
    その3年後に等身大のブロンズ像が制作され、現在その彫像はリバプールにある「ウォーカー・アート・ギャラリー」が所蔵しています。(上の写真)

    「平和」と題されたこの作品、少女が右手に椰子の枝、左手に鳩を持って立っています。
    彼女の足の下には兵士の武装品。
    戦いをやめて平和へ向かおうという願いが込められているんですね。

    平和の象徴として若者を描くことは多々ありますが、この作品は少女の柔らかな姿態に加え、張りのある植物や羽ばたく鳩をあしらうことで、万人に意図の伝わりやすい(わかりやすい)平和像となっています。

    世界にある平和像のほとんどは裸体像、または体の形がわかる薄着の姿をしています。
    それは裸であることが平和だという意味ではなく、人の精神を見える形で表現するのには裸体こそが最適だからです。
    そこから何を感じるかという受け手側の精神をも反映するのが、このような平和像というわけです。

    この作品はフォードが手掛けた最初の彫像のひとつでした。
    35歳のときの作品ですから、彫刻家としては遅咲きと言えるかもしれませんね。

    彼は1889年に美術品販売の店を開業します。
    人気アーティストの作品を一般大衆にも手頃な価格で提供するなど、英国の美術彫刻の普及にも貢献しました。

    詳しい経歴については過去の記事に書いてありますのでそちらをご覧ください。(該当記事)


    画像出典:ウィキメディア・コモンズ
    File:Edward Onslow Ford (1852-1901) - Peace (1887) front - Walker Art Gallery, Liverpool, May 2012 (7224847552).png
    クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

    タグ: Europa  少女  ♂♀  彫像  CC-License 

    街の天使と警察官

    街の中に裸の子供がいて、そばに警察官がいる光景を想像してください。
    それは一体どんな状況だと思いますか?

    露出狂の少年が現れて警察官が駆けつけたのだと思った方、ちょっと心が汚れているかも。
    裸の子供を警察官が守っているのだと思った方、それはたぶん正解。

    見たことがある方も多いと思いますが、ちょっと古い、いやだいぶ古いこんな写真作品があります。

    london_hydepark-nakedboys1923.jpg london_hydepark-nakedboys1926.jpg

    警察官が裸の男の子たちを追いかけているシーン。

    場所はイギリス、ロンドンのウェストミンスター地区の西に位置する王立公園「ハイド・パーク」
    追いかけているのはウェストミンスターにある「キャノンロウ警察署」の警察官。(左は男性警察官、右は女性警察官)

    これらの写真は1923年と1926年、当時の新聞デイリー・グラフィック誌のカメラマンによって撮影されました。(撮影者名は不明)

    この子たちは裸になったことを怒られているのではなく、遊泳禁止の池で遊んでいたことを怒られているのでした。
    100年前の公園で子供が天使の姿になってはいけないなんて、あり得ませんからね。
    子供たちの安全を考えて叱っている、優しいお巡りさんだったというわけです。

    2枚ともまったく同じシチュエーションなのでドキュメンタリーなのか演出写真なのか判断に苦しみますが、遊泳禁止の池で遊ぶ子供たちも、それを見つけて叱りつける警察官も、どちらも当時の出来事だったことは確かでしょう。

    安全な親水公園であれば、お巡りさんも怒ることなく天使たちを眺めていたかもしれませんね。


    子供と警察官というテーマの作品は意外と多く、イギリスやアメリカ、カナダの古い写真にはよく見受けられます。

    toronto-police_officer_and_naked_boys1930.jpg

    こちらは1930年にカナダのトロントで撮影された写真。

    残念ながらこちらも撮影者が不明で、撮影場所も不明。
    報道写真なのか単なるスナップ写真なのか、子供たちはなぜ裸なのか、お巡りさんと何を話しているのか、すべて不明。

    しかし奥まった木々と細い小道。
    どんな状況なのだろうと考えさせられる、趣のある作品であることは確かです。


    さて、天使と警察官・・・現代ではどうでしょう?
    公園であっても、天使と警察官が一緒にいるというシチュエーションは極めて少なくなりました。
    当の子供たち自身が、街の中で天使になることがほとんど無いのですから。

    しかしあえて採り上げるとすれば、こんな光景もまた、天使と警察官というテーマに当てはまるのではないでしょうか。

    body_freedom2015.jpg
    body_freedom2016.jpg body_freedom2017.jpg

    これは2015年と2017年にアメリカのサンフランシスコの街でおこなわれた、裸体主義者たちによるデモ行進の様子。

    正当な手続きを踏んでおこなわれるデモはどのようなものでも禁止することはできません。
    この日はヌードに関する新しい法律に抗議する者たちが集まり、ジェーン・ワーナー・プラザからサンフランシスコ市庁舎までを裸でパレードしました。

    裸のパレードとは言っても、WNBRのような街ぐるみのイベントではないので華やかさはありませんが、30人ほどがヌードで列をなす光景はとてもインパクトがあり、人々への訴えとしては効果的ですね。

    参加者の中には11歳くらいの少年もおり、極めて珍しいとはいえ、これも街の中の天使と言えるでしょう。

    出典:Body Freedom Parade → September 2015
    Body Freedom Parade → Mai 2017


    アニメ映画「となりのトトロ」の冒頭には、主人公の姉妹が自転車に乗った人をお巡りさんだと勘違いして身を隠すシーンがあります。
    子供にとって警察官はちょっと怖いイメージがあるようです。

    しかしだからこそ頼もしいとも言えますし、街にお巡りさんがいるからこそ、子供たちは天使にもなれるし、このようなデモ行進も安全におこなえるのです。

    タグ: Europa  America  少年  ♂♀  笑顔  イベント  OldPhoto 

    Hermaphroditus

    今回は作品をご紹介する前に、ある神の話をしたいと思います。

    ヘルマプロディートス(Hermaphrodītos)という神をご存知でしょうか?
    ギリシア神話に登場する神のひとりですが、なんと神話の世界でも大変珍しい、両性具有の神なのです。
    両性具有とは、ひとつの体に男性と女性の二つの性が混在していること。(どちらの性でもないという考え方もあります)

    ヘルマプロディートスはもともと男性でした・・・というより、絶世の美少年でした。
    父はオリュンポス十二神のヘルメース、母はアフロディーテという神界のサラブレッド。

    彼は15歳のとき、泉で水浴びしているときにサルマキスという名の精霊の女性に強姦されてしまいます。
    そのときサルマキスが彼とひとつになりたいと願ったため、ふたりの体が合体し、ヘルマプロディートスは両性具有者となったのでした。

    この物語は後の芸術家たちにインスピレーションを与え、ヘレニズム時代(紀元前3世紀から1世紀頃)には数体の彫像が制作されました。
    中でも取り分け有名なのが、パリのルーブル美術館が所蔵しているこの大理石像。

    sleeping_hermaphroditus.jpg hermafrodita.jpg

    紀元前2世紀頃に作られたとされる、眠れるヘルマプロディートスの像です。
    これはレプリカですが、オリジナルは1608年、ローマのサンタ・マリア・デッラ・ヴィットーリア教会の建設時に敷地内にて発見されました。
    あまりにも古い作品なので、作者が誰なのかはわかっていません。

    敷かれているマットレスの部分だけは、イタリアの彫刻家、ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ(Gian Lorenzo Bernini/1598-1680)が1619年に制作し、追加したものです。

    ご覧のように背中側は女性らしい柔らかな姿をしていますが、その股間には男性の象徴であるペニスと陰嚢が付いています。
    しかも亀頭が半分顔を出しており、少し元気な状態であることがうかがえます。

    彼の(彼女の)名誉のために言っておきますと、これは決してエッチな夢を見ているからではありません。男性は膀胱に尿が溜まったり、布で擦れるだけでも勃起します。
    15歳であれば尚更、当たり前の生理現象と言えるでしょう。


    anasyromenos_statuette.jpg

    こちらは別な作者によるもので、キプロス島で発見されたヘルマプロディートスの像。
    体形は完全に女性でありながら、股間には立派な男性器が付いています。

    勃起状態であることや、スカートをめくって中身を見せるポーズ(アナシロメノスポーズと呼ばれています)であることから、宗教的な意味合い、もしくはジョーク的な作品だったのだろうと思います。


    「両性具有」という言葉も、外見的に、内臓機能的に、精神的に、遺伝子的にと、様々な定義を以って語られる言葉ですが、ヘルマプロディートスのように手術やホルモン投与などをおこなわずに男性器と女性器の両方を有している人は、現在世界に6人ほどいるそうです。

    これが幸せなのか不幸せなのかは当人のみぞ知ることだと思いますが、古代ギリシアの哲学者プラトンは、自身の文学作品「饗宴」の中でこのようなことを述べています。

    『人間は元々両性具有的な存在であったが、神がこれを切断し、男と女に分けた。
     人間は元の姿に戻ることを願い、そのため男女の恋愛が生まれた。
     両性具有は、人間の本来の理想形である。』


    画像出典:ウィキメディア・コモンズ
    File:Sleeping Hermaphroditus-Louvre.jpg
    File:Hermafrodita 2.JPG
    File:Anasyromenos statuette, Rome art market.JPG
    ライセンス:パブリックドメイン

    タグ: Europa  少年  少女  ♂♀  彫像  眠り  CC-License 

    Sportininkas

    valentina_rybalko-sportininkas.jpg

    ロシアの彫刻家、バレンティーナ・リバルコ(Valentina Rybalko/1918-1991)による1972年の作品「Sportininkas」
    リトアニア南部のネムナス川沿いにあるドルスキニンカイという保養地に設置されています。

    タイトルは「アスリート」という意味。運動選手、主に陸上選手のこと。
    その名のとおり、立ちポーズでありながら今にも動き出しそうな躍動感ある作品です。

    少年アスリートが腰に手を当てて遠くを見据えています。
    右足を少し浮かせて、これから走り始めるところでしょうか?
    それとも途中で立ち止まって休んでいるところでしょうか?

    雨の雫や朝露に濡れると、それが汗に見えて一段と凛々しく感じられますね。

    画像出典:Blogi z drogi.Druskienniki.Muzeum komunizmu


    valentina_rybalko.jpg

    これは制作当時に撮影された写真。
    左側にいるのが作者のバレンティーナ・リバルコさん。

    彼女は1918年にロシアのクリミア共和国の首都、シンフェロポリで生まれました。
    1937年から翌年までレニングラードで絵画、彫刻、建築を学び、その後1946年まで彫刻家のビクター・シナイスキーに師事しました。

    大学院で学んだ後は芸術家協会のメンバーとなり、1951年から1989年までレニングラードのヴェラ・ムーヒナ美術学校で講師を務めました。
    1991年にサンクトペテルブルクにて死去。

    2006年にはロシア博物館にて「変化の時代:ソビエト連邦の芸術」展が開かれ、彼女の作品が展示されました。


    valentina_rybalko-sportininkas_bw.jpg valentina_rybalko-sportininkas_like.jpg

    バレンティーナ・リバルコ作「Sportininkas」と、それと同じポーズの人間との比較。

    タグ: Europa  少年  ♂♀  彫像  OldPhoto  造形比較 

    プリュショーの親子写真

    wilhelm_plueschow-untitled01.jpg wilhelm_plueschow-untitled02.jpg

    だいぶ前に母子ヌードの特集をしたことがありましたが(該当記事)、19世紀のドイツの写真家、ヴィルヘルム・フォン・プリュショー(Wilhelm von Plüschow/1852-1930)も同じようなテーマの作品を発表しています。

    左は父と息子で、右は母と娘でしょうか。
    どちらもそっくりな親子ですね。
    今から120年ほど前の1900年頃の作品で、タイトルは付けられていません。

    従兄弟のグレーデンの作品のように練り上げられた構図ではありませんが、プリュショーはモデルには恵まれていたようです。

    ところで、昔から「母子」のヌード作品はプロアマ問わずよく見るテーマですが、「父子」のヌードとなるとあまり見かけませんね、どうしてでしょう?

    まぁ母親は子を産んだ者としてその姿に愛着があるでしょうし、父親はどちらかと言うと写真を撮影する側ですからね。
    また女性と子供のペアのほうが万人受けするってことも、理由としてはあるんじゃあないでしょうか。


    画像出典:ウィキメディア・コモンズ
    Catalogue of Wilhelm von Plüschow's pictures
    ライセンス:パブリックドメイン

    タグ: Europa  少年  少女  ♂♀  OldPhoto  CC-License 

    Das homerische Gelächter

    lovis_corinth-das_homerische_gelachter.jpg

    ドイツの画家、ロヴィス・コリント(Lovis Corinth/1858-1925)による1909年の作品「Das homerische Gelächter」

    作者の生い立ちや経歴については過去の記事をご覧いただくとして(該当記事)、今回はこの絵の解説だけをしていきたいと思います。

    画家ロヴィス・コリントが1909年に描いたこの作品はギリシア神話の物語。

    神話は幻想的な話ばかりだとお思いの方もいるでしょうが、じつはドロドロとした愛憎劇や過激な描写がたくさんあります。
    この絵もそんなワンシーンを描いたものです。

    美の女神であるアフロディーテ(ローマ神話ではヴィーナス)は姿こそ絶世の美女ですが、性格はあまりよろしくないようです。
    アフロディーテには炎と鍛冶の神であるヘーパイストスという夫がいました。
    しかしアフロディーテはヘーパイストスの醜い容姿を嫌い、次第に他の男と浮気するようになりました。

    浮気の相手は主神ゼウスの息子、戦いの神アレース。(ローマ神話ではマルス)
    夫のヘーパイストスはゼウスの第一子なので、アレースはヘーパイストスの弟です。
    つまりアフロディーテは義理の弟と浮気していたんですね。

    アフロディーテは夫の留守中にたびたびアレースを招き入れては、ベッドの上でお熱い行為を楽しんでいました。

    この様子を天から見ていたのが太陽神ヘリオス。
    ヘリオスは二人の密会を夫のヘーパイストスに知らせます。
    この事実を知ったヘーパイストスは落胆しますが、同時に妻への激しい憎悪が芽生えてきました。

    しかし技術者であるヘーパイストスは妻を糾弾することなく、静かなる憎悪を抱きながらあるものを作り上げたのです。
    それはベッドの上に仕掛けた、目に見えない網を張り巡らした巧妙なトラップでした。

    後日ヘーパイストスは「仕事でしばらく家に戻れない」と言って家を出ます。
    アフロディーテは此れ幸いとばかりにさっそくアレースを家に呼び、ふたりで裸になってベッドの上で抱き合いました。

    しかしその途端、仕掛けられたトラップが発動!
    ふたりは見えない網に捕らえられ、まったく身動きが取れなくなってしまいました。
    もがけばもがくほど体に食い込み、裸のままどうすることもできません。

    帰宅したヘーパイストスはその光景を見て大いに怒りました。
    そしてここからが彼の復讐劇の始まりです。
    彼は伝令の神であるヘルメースに頼んで、オリュンポス十二神をこの場所に呼び集めたのでした。

    ヘーパイストスは十二神たちに「これから面白いものをご覧にいれましょう」と言い、アフロディーテとアレースの恥ずかしい姿を披露しました。
    十二神たちはみな、美の女神と戦いの神のあられもない姿に驚きますが、次第に笑いがこぼれてきました。

    その後拘束を解かれたふたり。
    アレースは恥ずかしさのあまり逃げるように立ち去り、アフロディーテも神々の失笑が木霊す中、去っていきました。
    ヘーパイストスは後に海の神ポセイドーンの仲介のもと、アフロディーテと離婚しています。


    物語ではオリュンポス十二神を呼び集めたとされていますが、このロヴィス・コリントの作品では天使や子供が多く描かれています。
    そりゃあ大人たちが「なんだなんだ!」と集まれば、子供だって寄ってくるでしょう。

    右端にはポカンとした表情の男の子がいて、下にいる幼児たちは興味なしといった様子。
    でも左端にいる12歳くらいの少年にはちょっと刺激の強い光景ですね。

    アフロディーテとアレースにとっては、子供たちに情事を見られたのはかなりの大ダメージ。
    せめてもの救いは、ふたりが裸で何をしていたのか、ほとんどの子がわかっていないというところでしょうか。
    ただし左上にいる、ニヤニヤ笑っている子鬼のような子だけは別として。


    画像出典:ウィキメディア・コモンズ
    File:Lovis Corinth Das homerische Gelächter 1909.jpg
    ライセンス:パブリックドメイン

    タグ: Europa  少年  少女  笑顔  ♂♀  絵画  CC-License 

    World without War

    zinaida_romanova-world_without_war01.jpg

    ロシアの彫刻家、ジナイダ・ロマノヴァ(Zinaida Romanova/1932- )による1981年の作品「World without War」

    タイトルの日本語訳は「戦争のない世界」
    ロシアの西部にある都市、カリーニングラードの彫刻公園に設置されているブロンズ像です。

    少年が両手を広げて立っており、その前後には体と同じ形をした「殻」があります。
    まるで脱皮をしたように見えますね。

    「戦争のない世界」という人類共通の願いを、しがらみから解き放たれた開放感や生まれ変わりのイメージとして表現しているのでしょう。
    木々の生い茂る公園に設置したことで、平和のイメージがより明確になっています。

    日本では公園にある平和像というと女性像が多いような気がするんですが、平和の意味をどう捉えるかによっても変わってくるのでしょう。
    フリーダムと捉えた場合は、確かに少年のほうがイメージが伝わりやすいかもしれません。

    作者については残念ながら詳細がほとんどわかりませんでした。
    でも名前からすると女性だと思います。
    もしかしたらモデルは息子さんでしょうか?


    ところで・・・
    彼が自由を謳歌しているこの場所、
    冬場はこうなってしまうようです。

    zinaida_romanova-world_without_war02.jpg

    ヒュウゥゥ〜!(風の音)

    触った時にもしブルブルと震えていたら、それは近くを通る車の振動ではないはず。
    優しくさすってあげましょう。

    タグ: Europa  少年  ♂♀  彫像 

    小さな駅で大きな心

    rei_railway.jpg

    「ちょっとぉ、電車行ったばかりじゃん!」

    ハッハッハ〜!人間にはのんびり待つことが必要なのだよ!
    ・・・と、時刻表の見間違いをごまかすRUKAおじさんでした。(^o^;)


    撮影と著作
    Copyright : RUKA

    タグ: 日本  少年  Face  RUKA 

    チャールズ・ポール・ウィルプの写真作品

    charles_paul_wilp-werner_poster.jpg

    ドイツの写真家、チャールズ・ポール・ウィルプ(Charles Paul Wilp/1932-2005)による1972年の写真作品。

    ガスマスクを装着した裸の子供たちがいて、その後ろに子供を抱きかかえた男性が立っています。
    何か重いテーマがありそうな作品ですが、明確なタイトルは付けられていません。

    何故ならば、この写真は当時のドイツの政治家、ルドルフ・ヴェルナー(Rudolf Werner/1920-1996)の選挙ポスターだからです。
    真ん中の男性がヴェルナー氏です。

    日本で選挙ポスターと言えば、候補者の顔を大きく載せて政党名やスローガン等を書き込んだものが多いようですが、どうやら使う写真やデザインには規定がなく、原則的に自由とのこと。
    ということは日本でもこの写真のように天使が写っていてもOKなんですね。
    まぁ当選するかどうかは別問題ですが。

    作者のチャールズ・ポール・ウィルプはドイツの広告デザイナー、写真家、芸術家。
    高等学校を卒業後、フランスのパリにある美術学校「アカデミー・ドゥ・ラ・グランショーミエール」を経て、ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州にある「RWTHアーヘン大学」に入学。
    その後、広告デザイナー兼写真家として幅広く活躍します。

    幾人かの政治家のイメージコンサルタントでもあったウィルプは、1972年に政治家のルドルフ・ヴェルナーから写真撮影を依頼されます。
    それは9人の裸の子供を使った総選挙用ポスターの制作でした。
    撮影は9月にウィルプの写真スタジオにて、2時間ほどかけておこなわれました。

    この選挙ポスターの意図は、当時の社会問題であった環境汚染(排気ガスなど)に対する抗議でした。
    子供たちがガスマスクを使うような社会にしてはいけない、というメッセージだったのでしょう。
    このポスターは約1万部が発行されましたが、肝心の選挙結果は散々だったそうです。

    政治家ルドルフ・ヴェルナーの広告戦略は失敗に終わりましたが、写真家チャールズ・ポール・ウィルプは印象深い素晴らしい作品を残してくれました。


    画像出典:Wahlkampf mit nackten Kindern

    タグ: Europa  少年  少女  ♂♀  OldPhoto 

    NUTIDA KONST

    carl_larsson-nutida_konst.jpg

    スウェーデンの画家、カール・ラーション(Carl Larsson/1853-1919)による1889年の作品「NUTIDA KONST」

    カール・ラーションについては過去に一度記事にしていますので、生い立ちや経歴についてはそちらをご覧ください。(該当記事)

    この作品は1889年、フランスのパリ万国博覧会に出展された絵画の中のひとつです。
    タイトルのNUTIDA KONSTとは英語で言うとContemporary Art、つまり「現代美術」という意味。
    当時としてはモダンであり前衛的であり、これこそが現代美術だと言わんばかりに自由な面白さが詰め込まれています。

    バルコニーのようなところで女性がヌードモデルをしていて、それを画家がスケッチしているという場面。
    これ自体は何ら珍しいことではありませんが、女性の髪型がすでに現代アートしていますね。
    女性は椅子の背もたれに腰を下ろし、一段高いところから画家を見下ろしています。
    画家の手首を掴んで蔑むような視線を投げかけているところは、女性の地位向上の表現でしょうか?

    すぐ横では裸の少年がこの絵のタイトルを掲げています。
    絵の中にタイトルが描かれていること自体、当時としては新しかったのでしょうが、それよりも面白いのは奥の庭で花をスケッチしている人物です。

    なんとチョンマゲをしている日本人が描かれています。

    この絵が描かれた1889年は明治22年。
    日本では明治4年に明治政府が「散髪脱刀令」を布告し、明治6年には明治天皇も散髪をおこない、それ以降、髷(まげ)を結った日本人は激減しました。(散髪脱刀令は髷を禁止するのではなく、髪型を自由にして良いという布告でした)

    明治22年にはチョンマゲの日本人はほとんどいなかったはずなので、これは日本の浮世絵などを参考にして描いたのでしょう。
    と言うのも、作者のカール・ラーションは大の日本通で知られていました。
    これについても過去の記事で書いていますが、彼の家には日本の美術品が飾られており「日本は芸術家としての私の故郷である」とも述べていたそうです。

    時代を先取るモダンな祭典、万国博覧会に古い日本人の姿が現代アートとして登場しているというのは、我々日本人からすると奇妙であり、興味深いことですね。

    ちなみに日本人の隣にいるカンカン帽を被った人物はラーション本人で、右端の背景にはこの頃建設中だったエッフェル塔が描かれています。

    タグ: Europa  少年  絵画 

    いらっしゃいませ

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    RUKA

    Author:RUKA


    子供は本来この世界における夢であり希望であり、その姿は大人にとってノスタルジーや心の潤い、癒しの対象でもあります。

    古くから子供の姿は愛すべきものとして認識され、絵画や彫像、写真等で様々に表現されてきました。天使のイメージもそのひとつです。
    そして各家庭でも、我が子への愛情ある記録(写真撮影)が数多くなされています。

    当ブログでは天使や子供をテーマにしたアート作品と、写真共有サイトFlickrで一般公開されている子供写真をご紹介しています。
    天使に見立てているので必然的に裸の作品が多くなりますが、すべてアートまたは家庭的な生活記録に限定しています。

    ふと訪れては日々の疲れを癒す天使の園・・・そんな憩いの場としてお使いいただければ幸いです。

    画像の著作者は私を含め様々ですが、著作権的に問題のない方法で掲載しています。
    また、公序良俗に反する画像や違法な画像、猥褻な画像は一切ありません。
    【当ブログの掲載ポリシー】

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    著者について...
    名前:RUKA (Rukachas)
    国籍:日本
    出身:埼玉(生まれは宮城)
    性別:男性
    年齢:あっという間の半世紀
    インターネット歴:22年

    20代の頃に仕事で幼稚園に出向いたのを機に子供の笑顔写真を撮り始める。
    1999年に「The Light of Smile 笑顔の灯り」という子供の笑顔をテーマにしたサイトを開設。
    サイト終了後はこのブログで世界の天使像や世界の子供写真を紹介している。
    6人の甥と姪の伯父さんでもある。

    メールアドレス: ruka_rukachas@ybb.ne.jp
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