Gymnasion

    sascha_schneider-gymnasion.jpg

    ドイツの画家、サシャ・シュナイダー(Sascha Schneider/1870-1927)による1912年の作品「Gymnasion」

    Gymnasionは「ギュムナシオン」と読みます。
    ギュムナシオンとは、古代ギリシアにて運動競技選手が訓練をおこなった施設のこと。

    競技者育成のために作られた公共施設で、施設内では全裸であることが義務付けられていました。
    ギュムナシオンという名称もギリシャ語で「裸の...」を意味する γυμνός (gymnos)という言葉に由来しています。

    学校と同じように教師やトレーナーがおり、若者に対して肉体的鍛錬をおこなっていました。
    当初は18歳以上専用の施設でしたが、やがて子供への教育施設としても使われるようになり、体育だけでなく道徳や倫理の授業もそこでおこなわれたそうです。

    この絵は教師の前で整列したシーンでしょうか。
    身長や体格に個人差がありますね。
    どのような鍛錬がおこなわれたのかは資料がないのでわかりませんが、向かって右端の華奢な少年もやがてはたくましい競技者となるのでしょう。

    palestra_pompeii.jpg
    【ポンペイにあるギュムナシオンの遺跡】

    画像出典:ウィキメディア・コモンズ
    File:Gymnasion.jpg
    ライセンス:パブリックドメイン
    File:Palestra, Pompeii.jpg
    クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


    この絵を描いたドイツの画家、サシャ・シュナイダーは1870年にロシアのサンクトペテルブルクで生まれました。
    1889年にドイツのドレスデン美術アカデミーに入学し、その後は本のカバーイラストを制作するイラストレーターとなりました。

    1900年代に入ってからはドイツとイタリアで交互に生活していましたが、第一次世界大戦が始まると再びドイツに戻り、その後仲間とともに「クラフト・クンスト」という芸術のための研究所を設立します。

    しかし晩年は糖尿病を患い、船での旅行中に糖尿病による発作を起こして亡くなりました。
    現在はドイツのドレスデンにあるロシュヴィッツ墓地に埋葬されています。


    彼の1912年の作品「Gymnasion」は整列している古代ギリシアの少年たちを描いていますが、このように身長の違う裸の子供を横に並べた写真をどこかで見たことはありませんか?

    そう、医学書や保健体育の資料などに載っている、人間の成長を記録した学術写真にそっくりです。


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    書籍「The Adolescent Period」より

    これはアメリカの医学博士、フランク・ケイリー・シャトルワース(1899-1958)が1951年に発表した書籍「The Adolescent Period」に掲載されている写真。
    子供の成長に関する研究論文で、ある少年の10歳から17歳までの体の変化を記録したものです。

    シャトルワースは1938年にも同様の書籍を出しており、その本は現在Googleブックスで全ページが公開されています。

    Googleブックスより
    「The Adolescent Period: A Graphic and Pictorial Atlas」


    croissance_d_un_garcon_sur_10_ans.jpg
    「Croissance d un garcon sur 10 ans」

    そしてこれは著作者不明ですが、ある母親が撮影した息子の10年間の成長記録だそうです。

    見たところ5歳から15歳くらいまででしょうか。
    年齢が記載されておらず、見た目の大きさが揃えられているため身長の変化がわかりませんが、正面から捉えているので体形の変化はよくわかりますね。
    幼少期にぽっちゃりしていた男の子が、第二次性徴が見られるあたりから筋肉が発達し、体が引き締まってくる様子が見てとれます。

    母親は医学の関係者だったのか、それとも一般の人だったのか?
    学術研究のための撮影だったのか、それとも単なる家族写真か?
    そのへんの詳細はまったく不明ですが、医学的には大変貴重な記録です。

    また、息子さんが思春期に入ってからもモデルを続けたのは、幼い頃からの習慣もあるとは思いますが、何よりも家族の愛情あらばこそだと思います。


    子供の健康に運動が深く関係しているという考え方は古代ギリシアに始まり、現代にも根付いています。

    画家のサシャ・シュナイダーが「Gymnasion」を描くときにこのような学術写真をモチーフとしたかどうかは定かではありませんが、その見た目の類似性同様、根底にあるのはどちらも、子供の成長と健康を願う心なのでしょう。
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    アルバムジャケットの天使たち - 3

    天使のような子供の写真を使った、レコード・CDのアルバムジャケット。
    前回の記事から2年以上間が空きましたが、今回はその3回目です。

    ミュージシャンが自分のアルバムジャケットに裸の子供の写真を使う理由は様々あると思います。
    家族愛や人類愛を歌っているのであれば曲のイメージとしてそういう写真を使うこともあるでしょうし、あるいは反対に曲のイメージとは掛け離れた面白さを狙っている場合もありますね。

    ジャケット画像は著作権の関係で直接の掲載ができませんので、今回もGoogleの画像検索でのご紹介となります。
    YouTubeで聴ける音楽もあるので、ジャケットを眺めながら聴いてみるのも良いでしょう。

    では古い順にご紹介します。


    □ フランスの音楽家「ジョゼ・ベルグマン」の1962年のアルバム「Petit Gibus Raconte La Guerre Des Boutons」のジャケット。
    Googleの画像検索で「José Berghmans Petit Gibus Raconte La Guerre Des Boutons」を検索

    1962年に公開されたフランス映画「La Guerre des boutons」(邦題:わんぱく戦争)のサントラ盤。
    裸の男の子が森の中で股間を隠して立っていますが、これは映画のワンシーンです。
    ヤンチャな子供たちの争いを描いた映画で、日本でも翌年に公開されました。
    ジャケット写真はカラーですが、元の映画はモノクロです。


    □ アメリカの歌手「ケニー・ランキン」の1969年のアルバム「Family」のジャケット。
    Googleの画像検索で「Kenny Rankin Family」を検索

    写っているのはケニー・ランキン氏本人で、抱き上げている二人の女の子は彼の娘だそうです。
    息子もいて、裏表紙では家族5人の写真が使われています。
    タイトルのとおり家族愛を歌ったアルバムだと思いますが、このような家族の協力は微笑ましいですね。


    □ スペインのフォーク歌手「イマノル」の1986年のアルバム「Mea Kulparik Ez」のジャケット。
    Googleの画像検索で「Imanol Mea Kulparik Ez」を検索

    10歳くらいの少女が手に持ったブドウを見つめながら立っているというアートっぽい写真。
    片足をちょっと浮かせたりして、演出されたポーズであることが伺えます。
    洗濯物とアイロンとアイロン台があるという、下着姿の理由を説明するようなセットですが、ブドウとの関連性は無さそうですね。


    □ アメリカのサイケデリックバンド「ブリーフ・ウィーズ」の1992年のアルバム「Songs of Innocence & Experience」のジャケット。
    Googleの画像検索で「Brief Weeds Songs of Innocence and Experience」を検索

    森の中で少年と少女がブランコに乗って遊んでいるシーン。
    兄妹なのか友達なのかはわかりませんが、たぶんナチュリストの子たちでしょう。
    リリースは1992年ですが曲は80年代に録音されたそうで、ジャケットに使われた写真も古そうですね。
    (Googleで画像が見つからない場合はこちら→ YouTube


    □ ブラジルの音楽グループ「ネグリトゥーヂ・ジュニオル」の1995年のアルバム「Gente da Gente」のジャケット。
    Googleの画像検索で「Negritude Gente da Gente」を検索

    5人の裸の幼児たちがリラックスした表情で床に座り込んでいます。
    様々な肌の色の子を配したということは、グローバルなメッセージのある曲なのかもしれません。
    手前のアジア系の女の子はポーズといい表情といい、イイ味出してます。


    □ アメリカのロックバンド「グー・グー・ドールズ」の1995年のアルバム「A Boy Named Goo」のジャケット。
    Googleの画像検索で「Goo Goo Dolls A Boy Named Goo」を検索

    2歳くらいの男の子とパパらしき男性がいますが、男の子の口の周りとパパの手が赤く汚れています。
    ラズベリーでも食べたんでしょうか?
    この写真、逆さまにするとパパの目線になりますね。


    □ フィンランドの音楽グループ「グラント」の2015年のアルバム「Myth of Blood」のジャケット。
    Googleの画像検索で「Grunt Myth of Blood」を検索

    19人もの裸の幼児が円形に寝転がっているという、ちょっとアーティスティックなモノクロ写真。
    これも古い時代に撮られたナチュリストの写真でしょうね。
    元の写真は顔の部分も写っていて楽しげな雰囲気だったのだと思いますが、こうしてトリミングされてしまうと怪しげなミステリーサークルのようです。


    □ イギリスのロックバンド「トランポリン」の2017年のアルバム「Swansea To Hornsey」のジャケット。
    Googleの画像検索で「Trampolene Swansea To Hornsey」を検索

    赤いカラーコーンが置いてある家の外(玄関前?)に裸の兄弟がいるというシチュエーション。
    舌を出しているおどけている6歳くらいのお兄ちゃんは左足にギプスをしています。
    たぶんメンバーのお子さんを撮影したファミリー写真でしょうね。


    私の記憶では80年代まではレコードジャケットに裸の子供が登場することはそんなに珍しいことではなく、むしろ純粋無垢の象徴であったり、アートであったりと、あまりネガティブな受け取られ方はしていなかったように思います。

    しかしその後、子供そのものを猥褻物と捉える風潮が高まり始めると、音楽ジャケットや雑誌等にこのような天使が登場することも少なくなりました。

    ところがヨーロッパでは近年、CDジャケットに裸の子供の写真を使うミュージシャンが再び現れ始めました。
    これは原点回帰とでも言いますか、昔のように子供の写真が正しい感覚で見られるようになってきたということで、良い傾向ではないでしょうか。

    以上、天使と同じ姿の子供の写真を使っているアルバムジャケットのご紹介、パート3でした。


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    書籍「mercredi aprés-midi」

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    1983年にフランスで出版された書籍「mercredi aprés-midi」
    フランスの写真家、ネグレポント(Negrepont/生没年不明)による2作目の写真集です。

    子供向けアート写真集としても発売されたこの本は、子供たちが自分たちの体をとおしてアートを知るための良い資料にもなっており、現在も古書として販売されています。

    Amazon.frより
    Mercredi après-midi Relié – 1983
    Rakuten.frより
    Rare album Photographique "Mercredi Après Midi" par Nègrepont

    古書はアンティーク的な価値もあり、どうしても値段が高くなってしまいますね。
    日本でも洋書を扱っている古本屋などには置いてあるかもしれません。


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    写真集のタイトルは日本語に訳すと「水曜日の午後」
    作者が子供たちを撮影したのが水曜日の午後だったからだそうです。

    フランスの小学校は水曜日もお休みの週休三日。
    現在は地域によって若干違い、午前中だけ授業のある学校もありますが、基本的には水曜日は休校日です。

    ネグレポントはこのことを「水曜日は魔法の日」という言葉で表現しています。
    子供たちによる魔法のような光景が見られるからでしょう。


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    彼はこの本の3年前に出版した「Les Enfants de Papier」(紙の子供たち)と題した写真集を何度も何度も見直したそうです。
    そして子供たちの本当の姿を収めた新しい本を発表したいと思い、次の仕事に取り掛かりました。
    彼のこの仕事にはたくさんの子供たちが積極的に参加してくれて、その結果この写真集が生まれたというわけです。

    作品ではロケーション場所として廃墟となった古い家が使われています。
    悲観的なはずのその場所でさえ、美しいおとぎ話の舞台のように見えてくるから不思議です。

    子供たちの自然な行動、明るい笑顔、そして瑞々しい姿態によって、まるで建物自体に魂が宿ったかのように。


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    子供たちの純粋な体は、窓から差し込む光によって例えられないほどの美となりました。
    日常的な光景でありながら、ネグレポントはそれを見事なまでのオブジェに仕立て上げたのです。

    彼はこの本の中でこう語っています。
    『この本の主な目的は、人間の在り方から遠く離れてしまったこの世界において、子供たちが果たす主導的役割が決して失われないよう、子供たちの権利を取り戻すことです。』

    子供が子供らしく遊び、子供らしく生きること。
    それは子供たちに与えられた当然の権利だと、彼は言っているのでしょう。


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    書籍「Les Enfants de Papier」
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    彫刻家のリアリズム

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    彫刻作品は必ずしも写実的とは限りませんが、人間の形を忠実に再現していれば、それは人間を学習するための資料にもなり得ます。

    人形(ひとがた)の制作においてリアルさを追求するならば「型取り」が最良の方法でしょう。
    実際の人間から型を取り、それに素材を流し込んで作る方法です。

    しかしこれは彫刻とは言えませんね。(作品作りの一環としておこなう彫刻家や芸術家はいます)
    やはり彫刻は盛ったり掘ったり削ったり、作者の審美眼と造形技術の賜物であってほしいと思うのです。

    余談ですが、人体彫像が実際の人間よりも小さかったり大きかったりするのは「これは型取りではないよ」という意思表示もあるのでしょうか?

    まぁそれはそうと、リアルな人体彫像を作る彫刻家は数多くいますが、中でも私がとくに好きなのが、ヴィム・ファン・デル・カント(Wim van der Kant/1949- )というオランダの彫刻家。

    【Wim van der Kant】
    https://www.wimvanderkant.nl


    顔がリアル、体がリアルというだけならば、そのような彫像は昔からありました。
    数千年前に作られたギリシア彫刻でさえ、その躍動感ある筋肉の造形には驚かされます。

    しかし、どこかリアルではない箇所があるのも否めません。
    それが作者の意図であれ、依頼主の注文であれ、当時の風潮であれ、モデルの形を100%は再現していないことは確かです。

    その点カント氏の作品はリアルさにおいて、ある種の凄みさえ感じるほど。
    ほとんどが少年像で、大きさは50〜80cmほどと小さいのですが、形には全く不自然さが無く、写真で見るとまるで肌をコーティングした本物の人間にさえ思えるほどです。

    このリアルさは人間と見比べてみるとよくわかるでしょう。
    カント氏の作品と実際の人間の写真を並べてみたのでご覧ください。
    (人物は同じようなポーズをしていますが彫像のモデルではありません。古いナチュリストの記録写真から似たポーズを選びました)

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    作者のヴィム・ファン・デル・カントは1949年生まれのオランダの彫刻家。
    ユトレヒト州アメルスフォールト市の視覚芸術アカデミーで彫刻を学び、1980年代後半から数々の魅力的な作品を生み出してきました。

    1990年代以降は「ギャラリーユトレヒト」を始めとして、アムステルダム、ロスマーレン、ハーグ、ベルギーのヘントなど、多くの美術館や展覧会で作品展示をおこなっています。

    彼の心がリアリズム彫刻へと揺れ動いたその原点、それはある日曜日、故郷の野外展覧会で見たロダンの作品でした。

    彫像「考える人」で有名なフランスの彫刻家、オーギュスト・ロダン(Auguste Rodin/1840-1917)の1877年の作品「L'Âge d'airain」を見たカント氏は、これこそが自分の求めるテーマだと確信したそうです。


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    左の画像が、カント氏が影響を受けたとされるロダン作の彫像「L'Âge d'airain」
    この写真は日本の兵庫県朝来市にある「但陽信用金庫会館」の本館に設置されている像を撮影したものです。

    そして右の画像はこの作品のモデルとなった22歳の男性。
    撮影は写真家のガウデンツィオ・マルコーニ(Gaudenzio Marconi/1841-1885)によるものです。

    画像出典:ウィキメディア・コモンズ
    File:Tanyo Shinkin bank Hall03bs1800.jpg
    クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
    File:Marconi, Gaudenzio (1841-1885) - 1877 - Auguste Neyt, modello 22enne di L'age d'arain.jpg
    ライセンス:パブリックドメイン


    若きカント氏をリアリズムへと導いたロダンの彫刻作品。
    その素晴らしい造形は初めにモデルありきと言っても過言ではないでしょう。

    カント氏も自分の作品にモデルがいることは公言していますが、モデルの素性は一切明らかにしていません。
    でもその姿勢が素晴らしいですね。彼は写真家ではなく彫刻家なのですから。

    カント氏の作品は大きさこそ実物大ではありませんが、誇張も省略もしないそのリアルさはモデルへの敬意を感じさせます。

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    19世紀の彫刻家、オーギュスト・ロダンは22歳の男性をモデルに精巧なブロンズ像を作りました。
    現代の彫刻家、ヴィム・ファン・デル・カントは12歳くらいの少年をモデルに精巧なブロンズ像を作りました。

    我々がそこから感じることは、そして学ぶべきことは、物体としてのリアルさはもとより、彫刻家とモデルの人生が交わったときにこそ美を後世に伝える作品が生まれるのだという、その歴史のリアルさではないでしょうか。


    Copyright : Win van de Kant

    人体画像出典
    Jeunes et Naturels (Copyright : Peenhill Ltd. Publishers)
    Sonnenfreunde (Copyright : Hanseatic Buch & Presse-Erzeugnisse)
    ウィキメディア・コモンズ
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    Millennium

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    ロシアの彫刻家、エフゲニー・ロタノフ(Evgeniy Rotanov/1940-2010)による1989年の作品「Millennium」

    ロシア北西部の都市サンクトペテルブルクにあるベリンスキーとモホヴォイ(方面?)の交差点付近に設置してある、高さ約180cmのブロンズ像です。

    頭上で腕を組み、誰かを待っているような仕草で大通りを眺めている少年。

    像が作られたのは1989年ですが、この場所に設置されたのは1999年です。
    ミレニアムというタイトルのとおり、西暦2000年を記念して設置されました。

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    作者の制作意図は定かではありませんが、この場所に設置されたのには何か意味があるのでしょう。
    遠くを見ているのは未来への展望、背伸びは飛躍を意味し、膝を軽く曲げたポーズは躍動を表している・・・のかもしれません。

    作者のエフゲニー・ロタノフは1940年にロシアのウラル地方で生まれました。
    1959年から1965年までレニングラード高等芸術大学で芸術を学び、才能ある教師たちによって彼もまた頭角を現します。
    1968年に牧師学校を卒業してからは数多くの彫刻作品を作り上げました。

    彼は1980年から1988年にかけてサンクトペテルブルクの芸術家協会のメンバーであり、クリエイティブ部門の委員長でもありました。
    1999年にはアフガニスタンで死亡した兵士の記念碑のモニュメントプロジェクトにも参加しています。

    多数の展覧会を開き、彫刻に関する国際シンポジウムにも参加するなど、人生を彫刻に捧げたロシアの名誉ある彫刻家のひとり。
    現在彼の作品はモスクワのトレチャコフ美術館など、ロシアの多くの美術館にて展示されています。


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    エフゲニー・ロタノフ作「Millennium」と、それと同じポーズの人間との比較。
    (人体画像出典:Sonnenfreunde)
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    サッカー少年の体形

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    私は小学生の頃、短い期間でしたが「サッカー少年団」に入っていました。
    サッカー少年団とは、学校や地域ごとに活動しているジュニアサッカークラブのことです。

    かなり昭和を匂わせるネーミングですが、今でもこの名前で運営しているところは多いみたいですね。
    名前は「少年団」ですが女の子も受け入れています。

    まぁそれはそうと、私がずっと以前から確信していることに「サッカー少年はスタイルが良い」というのがあります。
    全員が全員そうだとは言いませんが、他のスポーツに比べるとその率が高いと感じています。
    下半身のボリュームは野球少年のほうが上でしょうし、肌は相撲少年のほうが綺麗かもしれませんが、体形の良さはサッカー少年が際立っています。

    以前、70年代の男子用水着を紹介した記事で、水着モデルの少年たちの画像を引用したことがありましたが(該当記事)、どうやらこの子たちはスイスのサッカークラブの少年たちだったようです。

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    同じ子ごとに2枚ずつ、普段サッカーをしているときの写真と水着モデルのときの写真を並べました。
    サッカーウェアのときは体付きがよくわかりませんが、水着だとある程度は筋肉の発達具合が確認できますね。

    これらの画像は2000年代初頭に海外のサイトで公開されていたものですが、じつは撮影者を含め詳細がまったくわかりません。
    わかっているのは、1970年代〜80年頃にかけてスイスで撮影されたということだけ。

    しかし今となってはサッカー少年の体付きがよくわかる大変貴重な記録となっています。
    今回はこの子たちの画像を引用し、サッカー少年の体形について医学と美術の両面から考えていこうと思います。

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    【サッカーに必要な筋肉】

    サッカーは足を使う競技であることから下半身を鍛えれば良いようなイメージがありますが、じつは上半身の筋力がとても大切。

    とは言え、筋肉を鍛え過ぎると全体のバランスが崩れ、スピードや瞬発力、持続力などが損なわれてしまいます。
    つまりサッカー選手にとって大切なのは、上半身と下半身の筋肉のバランスです。

    サッカーをプレイする上で重要とされる筋肉は主に次の6つ。
    下半身にある「下腿三頭筋」「大腿四頭筋」「大臀筋」
    上半身にある「広背筋」「腹直筋」「大胸筋」



    【下腿三頭筋】

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    下腿三頭筋(かたいさんとうきん)とは、主に足首を屈曲・伸展させるための筋肉。
    腓腹筋とヒラメ筋という二つの筋肉で構成されている、簡単に言えば足のふくらはぎの筋肉です。
    この写真では靴下に包まれている部分ですね。

    下腿三頭筋は足首や爪先の力強さに関与しており、サッカーでは瞬発的な動作やキックの正確性に関わってきます。
    有効な筋力トレーニング法としては、ウエイトをかけた状態で足首を屈伸させるカーフ・レイズなどがあります。

    美術的には、立像などの見た目の安定感にも繋がる部位ですが、少年像の場合はあまり発達し過ぎていると繊細な美しさが損なわれてしまうので太過ぎないほうが良いでしょう。



    【大腿四頭筋】

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    大腿四頭筋(だいたいしとうきん)とは、人体の最大の骨である大腿骨を挟むように四方に存在する筋肉の総称。
    簡単に言えば脚の最も太い部分、太腿(ふともも)の筋肉です。

    走るスピードやキック力の向上には、この大腿四頭筋のトレーニングが欠かせません。
    鍛えるのが比較的容易な筋肉であり、筋力トレーニングにはスクワットやレッグプレス等が効果的です。
    この写真ではふたりとも高いところによじ登っていますが、もちろんこういう動作も効果的。

    美術的には、この部分の筋肉を強調した力強い彫像も多いのですが、やはりふくらはぎと同じく、あまり太過ぎないほうが美的ではありますね。



    【大臀筋】

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    大臀筋(だいでんきん)とは、哺乳類の臀部に存在する臀筋の中で最大の筋肉、つまりお尻を構成する筋肉です。
    人間は直立二足歩行をするため、四足歩行の動物と比べてこの筋肉がとても発達しています。

    大臀筋は下半身の動きを制御する筋肉で、サッカーではボールコントロールの技術に関わってきます。
    一流のサッカー選手のお尻が引き締まっているのは、この筋肉がシッカリと強化されているからです。
    子供の場合もサッカーが上達するにつれて形が整ってくる部分でもあります。

    大臀筋のトレーニングには、四つんばいになって脚を持ち上げるなどのいわゆるヒップアップ体操が効果的ですが、これは美術的にも美しいポーズです。



    【広背筋】

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    広背筋(こうはいきん)とは、背中の筋肉である棘腕筋の一部で、腕の付け根あたりから腰にかけて逆三角形の形をした筋肉です。
    左の子はちょっと細身で右の子は中肉中背ですが、子供で広背筋が目立つ子はあまりいないと思います。

    しかしサッカーでは広背筋は大事な要素。
    広背筋を鍛えることで肉体的な競り合い、いわゆるフィジカルコンタクトで負けない体を作ることができます。
    トレーニングには懸垂がもっともよく知られており、効果も高いそうです。

    広背筋がシッカリ鍛えられていると背中が逆三角形の美しい形となりますが、これはダビデ像など、美しいとされている彫像にも言えることですね。



    【腹直筋】

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    腹直筋(ふくちょくきん)とは、腹部の筋肉のうち前腹壁の中を走る前腹筋のひとつで、一般的には腹筋と呼ばれています。
    体幹部の屈曲や回旋、呼吸にも関与し、また腹圧を加える作用があるので排便や咳などにも関係している重要な筋肉です。
    この写真では服をめくって見せているのがその部分。

    サッカーの動作に上半身と下半身をバランス良く適合させるにはこの部分を鍛えることが重要であり、トレーニングにはクランチやリバースクランチなどのストレッチ運動が効果的です。

    美術的にはシックスパックの腹筋も人体美ではありますが、少年像の場合は胸部から下腹部にかけてなだらかなほうが美しく見えるかもしれません。(一番上の写真のように)



    【大胸筋】

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    大胸筋(だいきょうきん)とは、胸部を構成する筋肉の外側の部分で、上腕骨上部に付着している筋肉です。
    乳首の少し上側の部分で、この写真のように腕を上げると形がわかりやすいですね。

    サッカーでは広背筋とともに重要な筋肉で、とくにディフェンダーは相手を腕で抑える際、この大胸筋の強さが必要となります。
    トレーニング法で最も手軽なのは腕立て伏せであり、バーベルを使ったベンチプレス、ダンベルを使ったダンベル・フライなどもよく知られています。

    美術的には、腕を上げるポーズは胸板を美しく見せることができ、胸から腹、そして脚にかけての流れるような一体感が立像の美しさのひとつでもあります。

    ・・・・・

    以上のように、サッカーでは上半身と下半身の筋肉のバランスが大変重要。
    サッカー選手に太っている人が少ないのは皆さんご存知だと思いますが、極端に痩せている人や、筋肉がつき過ぎている人が少ないのもサッカーという競技の特徴です。

    子供もまた然りで、サッカーをある程度続けている子は体形のバランスがとても良いことに気付かされます。
    この画像の少年たちの美しく均整のとれた体形は、まさにサッカー少年ならではだったというわけですね。

    全身のバランスが大切なサッカーというスポーツは、まさに美しい体形を育むスポーツでもあった、と言えるのではないでしょうか。
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    天使たちの運動会【ナチュリスト編】

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    欧米諸国では古くからお馴染みのナチュリスト。
    主に夏場ですが、日々の生活を健康的に全裸で過ごそうという趣向を実践している人たちです。

    健康活動の一種ですから、ナチュリスト団体主催の運動会がおこなわれることもあります。
    家族連れや子供たちも参加し、それは通常の地域運動会と大差はありません。
    違いは服を着ていないということだけ。

    太陽の光を全身で浴びる天使たちの運動会。
    どのような種目があるのか、古いナチュリストの記録写真から考察してみましょう。


    【綱引き】undoukai_tsunahiki.jpg

    naturist_sportsday-rope01.jpg naturist_sportsday-rope02.jpg

    綱引きとは、二つのチームが一本の綱をお互いの陣地に向けて引き合い、より多く引き込んだほうが勝ちという競技。
    日本の学校の運動会でも定番で、観客たちも思わず力が入るダイナミックな一戦です。
    オリンピックでも1920年のアントワープ大会までは競技種目だったそうです。

    子供たちはどうしても手だけで引こうとしますが、裸の場合は体に擦り傷を作らないためにもそのほうが良いでしょう。
    靴を履かないと踏ん張りが効きませんが、かえってそのほうが面白いかもしれません。



    【徒競走】undoukai_tokyousou.jpg

    naturist_sportsday-running.jpg

    徒競走とは駆けっことも言いますが、複数人で一定距離を走って速さを競う短距離走です。
    走る速さだけでなく、途中に障害物やミニゲームなどを置いてゴールするまでの時間の短さを競う場合もあります。
    近年では徒競走に順位を付けず、走者全員で手をつないで一緒にゴールするようにしている小学校、幼稚園、保育園も存在するそうです。

    裸での徒競走は健康的ですが、この写真では靴を履いている子と履いていない子がいますね。
    実際、芝生の上ではどちらが走りやすいのでしょう?



    【ボール運び競争】undoukai_oodama.jpg

    naturist_sportsday-ball.jpg

    「玉転がし」「大球送り」などルールによって名称は違いますが、複数のチームに分かれてボールを運ぶ競技です。
    決められた場所に玉を転がして入った個数を競ったり、大型の玉を運びながらリレー競走する場合もあります。
    手に持ったスプーンに小さな玉を乗せて、その玉を落とさないように走る競技もありますね。

    ナチュリストたちがやっているこの競技は日本のとはちょっと違いますが、これもボール運び競争のひとつ。
    お腹の上に乗せたボールを落とさないように運ぶ競技です。



    【手押し車競争】teoshiguruma.jpg

    naturist_sportsday-teoshi.jpg

    「手押し車競争」「人間手押し車」など呼び方は色々あるようですが、人間を手押し車に見立てて進むレース競技。
    前側の人は腕立て歩きですから、距離が長いとかなりキツイですね。
    日本では体育の授業でやることはありますが、運動会ではあまり見かけません。

    裸でやる場合は前と後ろの信頼関係がとくに重要かもしれませんね。
    後ろの人がどこを見ているかなんて気にしていたらとてもできません。



    【パン食い競走】undoukai_pankui.jpg

    naturist_sportsday-pankui.jpg

    「競争」だと大食いや早食いになってしまいますが、この場合は「競走」
    パン食い競走とは運動会でおこなわれる徒競走のひとつで、途中に吊るしてあるパンを手を使わずに口でくわえてゴールを目指す、一種の障害物競走です。
    最近の運動会では衛生面を考え、袋に入ったままのパンを吊るすそうです。

    この写真ではパンではなく小さな果物(リンゴ?)を使っていますね。
    海外では徒競走ではなく、単体のゲームとしておこなうこともあるのでしょう。



    【棒倒し】undoukai_boutaoshi.jpg

    naturist_sportsday-boutaoshi.jpg

    棒倒しとは、チームで一本の長い棒を立てて、相手チームの攻撃から棒を守りつつ、先に相手の棒を倒したほうが勝ちという競技。
    棒の先に付けられた旗を先に取ったほうが勝ちというルールの場合もあります。
    騎馬戦と並び、運動会ではかなりエキサイティングな種目と言えるでしょう。

    ナチュリストたちの棒倒しはこれとは全く違いました。
    地面に立てたコケシのような棒を、ぶら下がった丸い玉を使って倒す競技でした。



    【組体操】undoukai_kumitaisou.jpg

    naturist_sportsday-kumitaisou.jpg

    組体操(組み立て体操)とは、道具を使用せずに身体のみを用いておこなう集団演舞のひとつ。
    小中学校の運動会ではプログラムの最後を飾る花形種目である場合が多いようです。
    日本では華やかさを求めるあまり、危険な高さの組体操が当たり前におこなわれていた時期がありました。

    ナチュリストの場合は怪我防止のためか、組体操をしている姿はあまり見たことがありません。
    人間は積み重ねなくても、華やかな演舞はいくらでもできるものです。



    【椅子取りゲーム】kids_isutori_game.jpg

    naturist_sportsday-isutori.jpg

    複数の人間でそれよりも少ない数の椅子の周りをぐるぐると回り、合図とともに同時に座って、座れなかった人が脱落するというゲーム。
    椅子の数を少しずつ減らしていき、最後の椅子に座ることができた人が勝ち。

    日本では運動会の種目ではなく、どちらかというと室内のレクリエーションとしておこなわれることが多いですね。
    しかし意外と運動能力と反射神経が求められる競技です。
    電車やバスの中でこれをやってはいけません。



    【表彰式】undoukai_trophy.jpg

    naturist_sportsday-hyoushou.jpg

    全ての競技が終わり、表彰式がおこなわれ、そして閉会式。
    表彰式では優勝したチームや頑張った個人をみんなで讃えます。

    日本の多くの運動会では、紅組と白組、あるいは複数に色分けされたチームで対抗し、点数で優勝が決まります。
    しかし最近では順位や勝敗を決めない運動会もあるそうです。
    せっかく頑張ったのに勝ったのか負けたのかわからないというのは、ちょっと味気ないですね。

    見た目で人間の優劣を決めるのは悪いことですが、子供たちが出した結果に順位があるのは決して悪いことではありません。
    みんな同じ人間であることを実感しながら競い、その上で結果を讃えるナチュリストたちの運動会に、私たちも何か学べることがありそうですね。


    画像出典:Jeunes et Naturels
    Copyright : Peenhill Ltd. Publishers


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    書籍「Encyclopédie de la vie sexuelle」

    encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_7-9.jpg

    フランスで出版されている「Encyclopédie de la vie sexuelle」という書籍。

    日本語に訳すと「性の百科事典」となるので若い夫婦のためのHow-To本かと思ってしまいますが、実際は子供向けの性教育図鑑であり、子供たちが正しい性の知識を身につけるための児童図書です。

    同じタイトルで4〜6歳向け、7〜9歳向け、10〜13歳向け、14〜16歳向けの4種類が発売されており、上の画像は7〜9歳向けの本の内容の一部です。
    (画像出典:2ememain.be)

    4人の医師によって書かれたこれらの本は、人間の成り立ち、仕組み、生殖、出産、避妊などについて丁寧にわかりやすく解説しており、非常にデリケートな問題である性について親と子の対話を促進することにも役立っています。

    出版社は1826年から続くフランスの老舗出版社「Hachette Livre」のユース部門である「Hachette Jeunesse」
    この本は1970年代から数年置きに内容を見直しながら出版されてきました。

    初期の頃は性そのものよりも生殖に重点が置かれ、同性愛に関する記述はなく、反対に現在売られている本では同性愛も扱っているなど、社会の変化に合わせて内容も変化しています。

    しかしそれよりも大きな変化は、年代ごとの表紙の移り変わりです。
    これはフランスに限らず日本でもよく見る傾向ですが・・・まぁとにかく見ていきましょう。


    【1973年】

    encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_7-9_1973.jpg encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_10-13_1973.jpg

    これは1973年に出版された「Encyclopédie de la vie sexuelle」の表紙。
    左が7〜9歳向け、右が10〜13歳向けです。

    画像出典:Musée national de l'Éducation
    クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

    読者と同年代の子供の写真を使うことで、子供たちに自分に関係ある内容だと理解させ、股間が見えている写真であることで人間の性に関する内容だと理解させ、そして男女のペアであることで将来の結婚に繋がる内容だと理解させる。
    性教育の教本としては、もっともわかりやすい表紙ではないでしょうか。

    当時は私も左側の本の子と同じくらいの歳でした。
    もしこの本の日本語版が出ていたら、日本の家庭でも1970年代の段階で正しい性教育ができていたかもしれませんね。

    Amazon.frより
    Encyclopédie de la vie sexuelle. de la physiologie à la psychologie. 7/9 ansCartonné – 1973
    Encyclopédie De La Vie Sexuelle De La Physiologie à La Psychologie 10 / 13 Ans . 1973



    【1980年】

    encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_7-9_1980.jpg encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_10-13_1980.jpg

    これは「Encyclopédie de la vie sexuelle」の1980年版の表紙。
    左が7〜9歳向け、右が10〜13歳向け。

    7〜9歳向けは遊んでいるシーンになり、10〜13歳向けは裸で身を寄せている写真になりました。
    10〜13歳といえば男女とも生殖が可能になる年齢ですから、横になって肌を密着させている写真は性行為推奨とも受け取られかねないのですが、この表紙は上半身のみの写真にすることでそれを防いでいます。
    その上で、幸せそうな顔としっかり繋いだ手によって、テーマが性教育であることを示しています。

    全身を見せる写真ではなくなったのは、この頃の性教育が医学的な教えから道徳的な教えへと移り変わる時期だったからかもしれません。
    つまり生殖の仕組みよりも、愛情を伴った性についてシッカリに教えようということではないでしょうか。

    Amazon.frより
    Encyclopédie de la vie sexuelle de la physiologie à la psychologie 7/9 ans Reliure inconnue – 1980
    Encyclopedie de la vie sexuelle de la physiologie a la psychologie 10/13 ans



    【1991年】

    encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_7-9_1991.jpg encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_10-13_1992.jpg

    1990年代に入ると表紙はこうなりました。
    仲の良さそうな男女の笑顔写真ですが、服を着ています。
    ポートレイト写真集かと思ってしまいそうなデザインですね。
    もはや表紙だけでは性教育の本であることがわからなくなってしまいました。

    本にとって表紙は大切な顔です。
    表紙だけで何の本なのか伝わらなくては意味がありません。
    しかも百科事典を銘打っているのですから、記念写真のようなツーショットには違和感を感じてしまいます。

    Amazon.frより
    Encyclopédie de la vie sexuelle des 7-9 ans / Verdoux, C/ Cohen, J / Réf: 29170Relié – 1991
    Encyclopédie de la vie sexuelle 10-13 ans Relié – 1992

    でもこれはまだ良いほうかもしれません・・・



    【1994年】

    encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_7-9_1994.jpg encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_10-13_1994.jpg

    これは1994年版の表紙。
    同じく着衣のポートレイトですが、なんと写真ではなくなってしまいました。

    綺麗な肖像画だとは思いますが、イラストにした理由はなんだったんでしょうか?
    子供や親にとってはこのほうが買いやすいんでしょうか?
    「水彩画入門」というタイトルのほうが似合いそうですね。

    Amazon.frより
    Encyclopédie de la vie sexuelle : 7-9 ans Poche – 1 février 1994
    Encyclopédie de la vie sexuelle : 10-13 ans Broché – 11 mars 1998

    さてこの「Encyclopédie de la vie sexuelle」という本、その後どうなったかと言いますと・・・



    【2003年】

    encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_7-9_2003.jpg

    こんな表紙になりました。(^^;)
    随分とまぁ砕けたというか、マンガチックになりましたね。
    気軽に買えるようにはなったかもしれませんが、百科事典としての威厳はなくなってしまいました。

    現在は他の出版社から同じようなタイトルの本が出ていますが、やはりどれもイラストの表紙です。
    これはフランスに限ったことではなく日本でも同じ。
    19XX年には表紙がヌード写真だった本が、20XX年に再発行されたらイラストになった、ということはよくあることです。

    性がテーマであるとはいえ、教育用の本までマンガチックに変える必要はあるのでしょうか?
    実感できる、共感できるということが性教育でのニーズなはずなのに。

    今の子供たちにどちらの本がわかりやすいかと問えば、たぶん現在売られている本を指すでしょう。
    しかし写真と漫画風なイラストのどちらがより「正確に」理解できるかといえば、写真でしょうね。

    性教育のように人の命に関わる教育の場合は、オブラートに包むような伝え方はするべきではないと思うのですが、皆さんはいかがお考えでしょうか?


    書籍「Encyclopédie de la vie sexuelle」の1973年版の内容に関しては、この動画で見ることができます。
    1978年に放映された映像で、オフィシャルの「Institut National de l'Audiovisuel」がYouTubeで公開しています。



    Les livres d'éducation sexuelle pour les enfants - Archive INA
    Copyright : Ina Styles
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    Boy with a Snail

    istvan_szentgyorgyi-boy_with_a_snail.jpg

    ハンガリーの彫刻家、イストヴァン・セントジェルジ(Istvan Szentgyörgyi/1881-1938)による作品「Boy with a Snail」
    制作年は不明です。
    この画像だと大理石像に見えますが、高さ約73cmのブロンズ像です。

    少年が手に持っているのはスネール、つまりカタツムリ。
    男の子の好奇心と小さな命の大切さが表現された作品です。

    私も子供の頃は、雨上がりに外に出てカタツムリを探したものです。
    現代はカタツムリに触れたことがない子も多いようですが、摘みやすい丸い殻、伸び縮みするユーモラスな動き、ヌルヌルした感触など、小さな子供の好奇心をくすぐる生き物であることは確かです。

    しかし今では寄生虫などの危険性が叫ばれているので、できれば触れないほうが良いでしょう。

    作者のイストヴァン・セントジェルジは新古典主義を実証したハンガリーの彫刻家。
    彼の作品の多くは「ハンガリー国立美術館」が所蔵しています。

    1881年生まれの彼は応用芸術学校で彫刻を学んだ後、1905年から1910年までベルギーのブリュッセルアカデミーにて彫刻家のチャールズ・ファン・デル・シュタッペンの生徒として学びました。
    その後多くの彫像を発表し、墓地や噴水等も手掛け、1925年にはアートスクールの教師となりました。

    この彫像は制作年が不明でモデルについても定かではありませんが、彼の作品には自分の子供をテーマとしたものがあるので、この子も息子さんかもしれません。
    きっとカタツムリが好きな子だったのでしょうね。


    istvan_szentgyorgyi-boy_with_a_snail_bw.jpg istvan_szentgyorgyi-boy_with_a_snail_like.jpg

    イストヴァン・セントジェルジ作「Boy with a Snail」と、それと同じポーズの人間との比較。
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    タグ: Europa  少年  ♂♀  彫像  OldPhoto  造形比較 

    書籍「Les Enfants de Papier」

    negrepont-les_enfants_de_papier01.jpg

    フランスの写真家、ネグレポント(Negrepont/生没年不明)による1980年発行の写真集「Les Enfants de Papier」

    タイトルは日本語に訳すと「紙の子供たち」
    フランスの少年たちの自然な姿を芸術的なタッチで捉えています。

    Amazon.frより
    Les Enfants de Papier Relié – 1984(1984年の再販版)


    作者のネグレポントは1980年代に子供を題材としたいくつかの書籍を出版したフランスの写真家。
    日常を力強いフレームで切り取り、詩的なアレンジを加えた彼の高コントラストな作品は、現在も高い評価を得ています。

    negrepont-les_enfants_de_papier02.jpg negrepont-les_enfants_de_papier03.jpg

    ネグレポントは書籍の中でこう語っています。(意訳)

    『私が初めてカメラで子供を撮った時、私はその子よりも年下でした。古いカメラで学校の友人をたくさん撮り、私は次第にカメラに魅了されていきました。
    時が経ち、写真技術を習得し、そして私は写真家になりました。写真は私の生活の一瞬一瞬を明らかにする、まさに魔法の力です。』

    『二人の少年が屋上で遊び、少女は金色の輝きを放つ。この独特な日常生活において、子供たちはかつてないほど効率的な表現をしてくれました。その光景はとても感覚的なもので、私はそれに反応してイメージを定着させました。
    この書籍ではすべての写真があなたを子供時代に戻してくれるでしょう。そしてそれがあなたの現実社会での力となることを私は願っています。』

    negrepont-les_enfants_de_papier04.jpg negrepont-les_enfants_de_papier05.jpg

    日常の光景でありながら非日常の雰囲気を持った彼の作品。
    モデルの子供たちはただカメラの前でおどけているのではなく、写真家の意思に共感し、それを見える形に変換してくれているかのようです。


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    ネグレポントの写真集
    書籍「mercredi aprés-midi」
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    Author:RUKA


    当ブログは子供を表現した世界の絵画、彫像、写真作品をご紹介しています。
    天使に見立てているので必然的に裸の作品が多くなりますが、すべてアートまたは家庭的な生活記録に限定しています。

    子供は本来この世界における夢であり希望であり、その姿は大人にとってノスタルジーや心の潤い、癒しの対象でもあります。

    古くから子供の姿は愛すべきものとして認識され、絵画や彫像、写真等で様々に表現されてきました。天使のイメージもそのひとつです。
    そして各家庭でも、我が子への愛情ある記録(写真撮影)が数多くなされています。

    当ブログではそれら子供や天使をテーマにしたアート作品と、写真共有サイトFlickrで一般公開されている子供写真をご紹介しています。(できるだけ天使の姿に近いものを選んでいます)

    ふと訪れては日々の疲れを癒す天使の園・・・そんな憩いの場としてお使いいただければ幸いです。

    画像の著作者は私を含め様々ですが、著作権的に問題のない方法で掲載しています。
    また、公序良俗に反する画像や違法な画像、猥褻な画像は一切ありません。
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    著者について...
    名前:RUKA (Rukachas)
    国籍:日本
    出身:埼玉(生まれは宮城)
    性別:男性
    年齢:あっという間の半世紀
    インターネット歴:22年

    20代の頃に仕事で幼稚園に出向いたのを機に子供の笑顔写真を撮り始める。
    1999年に「The Light of Smile 笑顔の灯り」という子供の笑顔をテーマにしたサイトを開設。
    サイト終了後はこのブログで世界の天使像や世界の子供写真を紹介している。
    6人の甥と姪の伯父さんでもある。

    メールアドレス: ruka_rukachas@ybb.ne.jp
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