Prüfung des ersten Flügels

    sacrevoir-prufung_des_ersten_flugels.jpg

    ドイツの画家、サクレボワール(Sacrevoir/1964- )による絵画作品「Prüfung des ersten Flügels」
    制作年はわかりませんでした。

    タイトルは日本語に訳すと「最初の翼の検討」となります。
    ソファーの上でひとりの少年が眠っていて、その横に翼が無造作に置いてあります。
    この翼は仮装などで使う、背負うタイプの衣装でしょうね。

    右側の少年がその翼を拾い上げようとしています。
    同時に自分の腰に巻いてあるタオルを外そうともしており、タイトルのとおり天使になることを検討しているのかもしれません。

    とは言っても、舞台の天使役を検討しているわけではないでしょう。
    たぶんこの絵は比喩的な表現なのだと思います。
    どのような意味なのかは、見る者の受け取り方次第といったところでしょうか。

    作者のサクレボワールはベルリンを拠点として活動する現代画家のひとり。
    1964年にベルリンで生まれた彼は、数学と視覚芸術(絵画)を学んでプロの画家となりました。

    若者たち、とくに少年のか弱さや静けさ、美しさを絶妙なタッチで描き、これまでにベルリンやミュンヘン、アムステルダムなどで数々の個展を開いています。

    オフィシャルサイトでは、独自の味わいを持った彼の作品が存分に堪能できます。


    【SACREVOIR】
    http://www.sacrevoir.de
    関連記事

    タグ: Europa  少年  ♂♀  眠り  衣装  絵画 

    La petite baigneuse

    thomas_couture-la_petite_baigneuse.jpg

    フランスの画家、トマ・クチュール(Thomas Couture/1815-1879)による1849年の作品「La petite baigneuse」
    ロシアのエルミタージュ美術館が所蔵している作品で、日本語では「小さな水浴者」というタイトルが付けられています。

    10歳くらいの少女が岩の上に腰掛けている絵ですね。
    少女の横にはリンゴが置いてあり、その下には十字架の付いた赤い布があります。

    水浴とは水に浸かることですが、この子の足下に池があるということでこのタイトルなのでしょう。
    しかしこれは作者が付けたタイトルではないのかもしれません。

    というのも、この絵は1850年代後半にロシアの美術収集家が所有し、その後「ロシア芸術アカデミー美術館」に移されたのですが、1868年の展示目録では「森の中の少女」というタイトルだったからです。

    この絵は背景に情報がほとんど含まれておらず、見えるのは葉っぱと岩だけですが、そこにいる少女が裸であることに何か理由が必要だったのでしょうか?

    水浴をしているから、というのはもっともらしい説明ではありますが、初めの「森の中の少女」というタイトルのほうがこの作品には相応しいような気がします。

    「森の中になぜ裸の少女が?」「きっと精霊なのだろう」
    それでイイんじゃないでしょうか。


    作者のトマ・クチュールは1815年、フランスのオワーズ県サンリス生まれ。
    11歳のときに家族とパリに移り住み、やがて国立の工芸学校とエコール・デ・ボザールで美術を学びます。

    彼はフランス国家による奨学金付き留学制度「ローマ賞」に6回も挑みますが、ことごとく失敗。
    7回目の挑戦でようやく受賞を手にし、1840年からサロンに歴史画と風俗画を出展し始めました。

    彼の革新的なテクニックは各所から注目されますが、政府や教会から依頼された壁画制作に関しては良い成果を上げることができず、このことで批判を浴びてしまいます。

    その批判に耐えられなかった彼は1860年に故郷のサンリスに戻り、その後は美術教師として若い画家たちの指導にあたりました。
    1879年3月にパリ郊外の街ヴィリエ・ル・ベルにて63歳で亡くなりました。


    画像出典:ウィキメディア・コモンズ
    File:Couture, Thomas - Little Bather.jpg
    ライセンス:パブリックドメイン
    関連記事

    タグ: Europa  少女  絵画  Water  CC-License 

    Gymnasion

    sascha_schneider-gymnasion.jpg

    ドイツの画家、サシャ・シュナイダー(Sascha Schneider/1870-1927)による1912年の作品「Gymnasion」

    Gymnasionは「ギュムナシオン」と読みます。
    ギュムナシオンとは、古代ギリシアにて運動競技選手が訓練をおこなった施設のこと。

    競技者育成のために作られた公共施設で、施設内では全裸であることが義務付けられていました。
    ギュムナシオンという名称もギリシャ語で「裸の...」を意味する γυμνός (gymnos)という言葉に由来しています。

    学校と同じように教師やトレーナーがおり、若者に対して肉体的鍛錬をおこなっていました。
    当初は18歳以上専用の施設でしたが、やがて子供への教育施設としても使われるようになり、体育だけでなく道徳や倫理の授業もそこでおこなわれたそうです。

    この絵は教師の前で整列したシーンでしょうか。
    身長や体格に個人差がありますね。
    どのような鍛錬がおこなわれたのかは資料がないのでわかりませんが、向かって右端の華奢な少年もやがてはたくましい競技者となるのでしょう。

    palestra_pompeii.jpg
    【ポンペイにあるギュムナシオンの遺跡】

    画像出典:ウィキメディア・コモンズ
    File:Gymnasion.jpg
    ライセンス:パブリックドメイン
    File:Palestra, Pompeii.jpg
    クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


    この絵を描いたドイツの画家、サシャ・シュナイダーは1870年にロシアのサンクトペテルブルクで生まれました。
    1889年にドイツのドレスデン美術アカデミーに入学し、その後は本のカバーイラストを制作するイラストレーターとなりました。

    1900年代に入ってからはドイツとイタリアで交互に生活していましたが、第一次世界大戦が始まると再びドイツに戻り、その後仲間とともに「クラフト・クンスト」という芸術のための研究所を設立します。

    しかし晩年は糖尿病を患い、船での旅行中に糖尿病による発作を起こして亡くなりました。
    現在はドイツのドレスデンにあるロシュヴィッツ墓地に埋葬されています。


    彼の1912年の作品「Gymnasion」は整列している古代ギリシアの少年たちを描いていますが、このように身長の違う裸の子供を横に並べた写真をどこかで見たことはありませんか?

    そう、医学書や保健体育の資料などに載っている、人間の成長を記録した学術写真にそっくりです。


    the_adolescent_period.jpg
    書籍「The Adolescent Period」より

    これはアメリカの医学博士、フランク・ケイリー・シャトルワース(1899-1958)が1951年に発表した書籍「The Adolescent Period」に掲載されている写真。
    子供の成長に関する研究論文で、ある少年の10歳から17歳までの体の変化を記録したものです。

    シャトルワースは1938年にも同様の書籍を出しており、その本は現在Googleブックスで全ページが公開されています。

    Googleブックスより
    「The Adolescent Period: A Graphic and Pictorial Atlas」


    croissance_d_un_garcon_sur_10_ans.jpg
    「Croissance d un garcon sur 10 ans」

    そしてこれは著作者不明ですが、ある母親が撮影した息子の10年間の成長記録だそうです。

    見たところ5歳から15歳くらいまででしょうか。
    年齢が記載されておらず、見た目の大きさが揃えられているため身長の変化がわかりませんが、正面から捉えているので体形の変化はよくわかりますね。
    幼少期にぽっちゃりしていた男の子が、第二次性徴が見られるあたりから筋肉が発達し、体が引き締まってくる様子が見てとれます。

    母親は医学の関係者だったのか、それとも一般の人だったのか?
    学術研究のための撮影だったのか、それとも単なる家族写真か?
    そのへんの詳細はまったく不明ですが、医学的には大変貴重な記録です。

    また、息子さんが思春期に入ってからもモデルを続けたのは、幼い頃からの習慣もあるでしょうが、何よりも家族の愛情あらばこそだと思います。


    子供の健康に運動が深く関係しているという考え方は古代ギリシアに始まり、現代にも根付いています。

    画家のサシャ・シュナイダーが「Gymnasion」を描くときにこのような学術写真をモチーフとしたかどうかは定かではありませんが、その見た目の類似性同様、根底にあるのはどちらも、子供の成長と健康を願う心なのでしょう。
    関連記事

    タグ: Europa  少年  ♂♀  スポーツ  絵画  CC-License  OldPhoto 

    Die Nymphe der Düssel

    eduard_steinbruck-die_nymphe_der_dussel.jpg

    ドイツの画家、エドゥアルド・シュタインブルック(Eduard Steinbrück/1802-1882)による1837年の作品「Die Nymphe der Düssel」

    物思いにふけるようなちょっと虚ろな眼差しで佇んでいる少女。
    大人の女性にも見えますが、胸の膨らみ具合から言ってたぶん10代でしょう。

    タイトルは訳すと「デュッセルのニュンペー」となりますが、デュッセルとはドイツの都市デュッセルドルフを流れる「デュッセル川」のことで、ニュンペーとは英語で言うとニンフ、つまり精霊です。
    「デュッセル川の精霊」という意味ですね。

    精霊は非常に長生きで、いつまでも美貌を保つそうですが、それゆえに退屈な日々を送ることもあるのでしょう。

    と言うのも、花を咲かせたり人間の病を治すなど人々に恩恵を与える精霊がいる反面、一方では粗野な面を持つ精霊もおり、森の中を歩く人間を魔力で惑わせたり、とり憑いて正気を失わせることもあるそうです。

    人間の若者に恋をして強引にさらっていくこともあり、Nympheという言葉は女性の過剰性欲を意味するニンフォマニアという言葉の語源でもあります。

    この絵が人間の少女を描いたものならば「片思いの少女」とか「家事手伝いも楽じゃない」というタイトルが思い浮かびますが(浮かばないか...)、もし悪事をする精霊なのだとしたら、この表情にも何か怖いものを感じてしまいますね。

    作者のエドゥアルド・シュタインブルックは1802年、ドイツのマクデブルク生まれ。
    ベルリンの美術学校にて、画家のカール・ウィルヘルム・ワッハ(1787-1845)の指導を受けました。

    神話や伝説などの歴史画を描き続けた彼は、1876年に引退し、1882年に亡くなりました。
    関連記事

    タグ: Europa  少女  Water  絵画 

    ルノワールの絵画作品

    pierre_auguste_renoir-portrait_of_irene.jpg

    フランスの画家、ピエール=オーギュスト・ルノワール(Pierre-Auguste Renoir/1841-1919)による1880年の作品「Portrait d'Irène Cahen d'Anvers」

    日本では「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢の肖像」と呼ばれている作品です。

    描かれているのは、ベルギーのアントワープ出身のルイ・カーン・ダンヴェール伯爵の長女、イレーヌちゃん8歳。
    多くの印象派の絵画の中で「最も美しい肖像画」とも称され、日本でも人気の高い作品のひとつです。

    画像出典:ウィキメディア・コモンズ
    File:Pierre-Auguste Renoir, 1880, Portrait of Mademoiselle Irène Cahen d'Anvers, Sammlung E.G. Bührle.jpg
    ライセンス:パブリックドメイン


    絵画に造詣がない人でも「ルノワール」という名前は聞いたことがあるでしょう。
    優しく温かなタッチで幸福感あふれる作品を描いた、世界的に有名なフランスの画家です。

    女性の美を追求し続けた彼の作品には、美しい裸婦や可愛らしい少女の肖像画が多数残されています。
    その中でもとくに有名なのが、このイレーヌちゃんの肖像画。

    しかし今回ご紹介するのは、そういった作品ではないのです。

    ルノワールが生涯でたった一度だけ、少年を描いていたことをご存知でしょうか?
    彼が描いた唯一の少年の絵がこちら。

    pierre_auguste_renoir-le_garcon_au_chat.jpg

    ルノワールが1868年、27歳のときに描いた「Le garçon au chat」(猫と少年)という作品。
    現在はパリのオルセー美術館が所蔵しています。

    10代前半と思われる少年が、台の上の猫に寄り添って立っています。
    おだかやな表情からは幸せなひとときであることを感じさせます。
    柔らかく手を組む仕草、艶やかな後ろ姿には、女性モデルのような色っぽさがありますね。

    じつはこの少年、当時の男娼ではないかと言われています。
    男娼とは、売春や性的サービスを仕事としている男性のこと。(男性の娼婦という意味)

    当時パリでは女性の売春は条件付きで認められていましたが、男性の売春は違法行為でした。
    そのため街頭で大っぴらに活動する者は少なく、多くの男娼は売春宿でこっそりと働いていました。
    この少年の素性も明確には語られていませんが、売春宿で働いていた少年の可能性があるそうです。

    ルノワールは同性愛者ではありませんし、この前年には愛人との間に子供も生まれているので、単なる絵のモデルとして雇っただけでしょう。
    しかし少年は絵画モデルというこの仕事に、束の間の安らぎを覚えたのではないでしょうか。


    ルノワールは1841年、決して裕福ではない仕立て屋の六男として生まれました。
    13歳から陶器の絵付け職人となりましたが、やがて陶器印刷の機械が発明され、彼は職を失ってしまいます。

    その後、画家の道を志して21歳でシャルル・グレールのアトリエに入り、そこでモネやシスレーらと出会います。
    彼は印象派の画家として活動を始め、いくつかの展覧会に参加して入選を果たします。
    とくに女性を明るく華やかに描いた作品は人々の好評を博し、肖像画家としても成功を収めました。

    しかし晩年はリウマチを患い、車椅子の生活となってしまいます。
    彼は痛む手に絵筆を縛り付け、そんな状態であっても精力的に絵を描き続けました。

    1919年12月3日、亡くなったその日もアネモネの花の絵を描いていたそうです。


    ルノワールの作品には暗い絵がひとつもなく、描かれている人々はみな楽しそうに微笑んでいます。
    彼は生涯一貫して、人々の幸せそうな様子を描き続けました。

    「君はなぜ綺麗で愛らしい絵ばかりを描くんだ?」
    他人からそう問われた彼は、こう答えたそうです。

    「芸術が愛らしいものであってなぜいけないんだ? 世の中は不愉快なことだらけじゃないか」

    ルノワールは自分の作品が誰かの家に飾られることを常に意識し、「絵は家を明るくするものでなければならない」という信念を持っていたそうです。

    男娼の少年をモデルに絵を描いたのも、せめて絵の中だけでも安らいでいてほしい、微笑んでいてほしい・・・そんな思いがあったからかもしれません。
    関連記事

    タグ: Europa  少年  少女  Face  CC-License  絵画 

    The Education of Achilles

    giovanni_battista_cipriani-the_education_of_achilles.jpg giovanni_battista_cipriani-chiron_instructing_achilles_in_the_bow.jpg

    イタリアの画家、ジョヴァンニ・バッティスタ・チプリアーニ(Giovanni Battista Cipriani/1727-1785)による絵画2点。
    英語でのタイトルは左が「The Education of Achilles」右が「Chiron Instructing Achilles in the Bow」で、どちらも1776年頃の作品です。

    立派な髭をたくわえた男性が少年に槍投げと弓矢を教えているところですが、よく見るとこの男性、下半身が馬です。
    馬並みではなく、本当に馬。
    少年は体付きからすると10代半ばといった感じですね。

    スポーツの指導は手取り足取り、いろんなところを取りながら教えるものですが、現代では当人そっちのけで第三者がセクハラだのパワハラだとの騒ぐことがあるので大変です。
    この絵は神話の世界なのでふたりとも裸ですが、きっと良い師弟関係なのでしょう。

    さてこのふたりはいったい誰なのかと言いますと、おっさんのほうはギリシア神話に登場する半人半馬の怪物、ケイローン。
    ペリオン山に住み、死後は天に召されて射手座になったと言われています。

    ケイローンは農耕の神クロノスと精霊のピリュラーのあいだに生まれました。
    父クロノスが浮気をして、妻の目を逃れるために馬に姿を変えてピリュラーと性交したため、このような姿で生まれてしまったそうです。

    一般に野蛮で粗暴だと言われている半人半馬のケンタウロス族の中でケイローンは例外的な存在であり、賢者として知られています。
    彼はヘラクレスやカストール、イアーソーンなどの英雄たちに武術や馬術を教え、アスクレピオスには医術を授け、そして少年期のアキレウスの教育係でした。

    この絵に描かれている少年こそが、そのアキレウスです。

    アキレウスはプティーアの王であるペーレウスと、海の女神テティスとのあいだに生まれました。
    生まれるとすぐ母テティスは息子を不死身にするため、彼のかかとを持って冥府を流れるステュクス川の水に浸します。

    ステュクス川の水は生き物を不死にする効力があり、このことでアキレウスは不死となるのですが、テティスの手が彼のかかとを掴んでいたため、かかとだけは水が浸からず不死とはなりませんでした。

    その後、テティスがアキレウスを養育しなかったため、父ペーレウスはアキレウスを賢者であるケイローンに預けます。
    ケイローンはアキレウスの養育および教育係として、アキレウスを立派な勇者へと育て上げました。

    後にアキレウスはトロイア戦争においてミュルミドーン人を率いて50隻の船と共に参戦し、たったひとりで敵の名将を討ち取るなどの大活躍を見せます。
    しかし戦争に勝利する前に、唯一の弱点である足のかかとを矢で射抜かれてしまい、命を落としたのでした。

    アキレウスはラテン語では「アキレス」
    足のかかとからふくらはぎにかけての腱を「アキレス腱」と言いますが、これは彼のこの故事に因んで名付けられました。

    今回は登場人物の説明だけで長くなってしまったので、作者であるジョヴァンニ・バッティスタ・チプリアーニについてはまた今度。(^-^)/


    画像出典:ウィキメディア・コモンズ
    File:Giovanni Battista Cipriani - The Education of Achilles, 1776.jpg
    File:Giovanni Battista Cipriani - Chiron Instructing Achilles in the Bow, 1776.jpg
    ライセンス:パブリックドメイン
    関連記事

    タグ: Europa  少年  ♂♀  スポーツ  絵画  CC-License 

    書籍「Encyclopédie de la vie sexuelle」

    encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_7-9.jpg

    フランスで出版されている「Encyclopédie de la vie sexuelle」という書籍。

    日本語に訳すと「性の百科事典」となるので若い夫婦のためのHow-To本かと思ってしまいますが、実際は子供向けの性教育図鑑であり、子供たちが正しい性の知識を身につけるための児童図書です。

    同じタイトルで4〜6歳向け、7〜9歳向け、10〜13歳向け、14〜16歳向けの4種類が発売されており、上の画像は7〜9歳向けの本の内容の一部です。
    (画像出典:2ememain.be)

    4人の医師によって書かれたこれらの本は、人間の成り立ち、仕組み、生殖、出産、避妊などについて丁寧にわかりやすく解説しており、非常にデリケートな問題である性について親と子の対話を促進することにも役立っています。

    出版社は1826年から続くフランスの老舗出版社「Hachette Livre」のユース部門である「Hachette Jeunesse」
    この本は1970年代から数年置きに内容を見直しながら出版されてきました。

    初期の頃は性そのものよりも生殖に重点が置かれ、同性愛に関する記述はなく、反対に現在売られている本では同性愛も扱っているなど、社会の変化に合わせて内容も変化しています。

    しかしそれよりも大きな変化は、年代ごとの表紙の移り変わりです。
    これはフランスに限らず日本でもよく見る傾向ですが・・・まぁとにかく見ていきましょう。


    【1973年】

    encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_7-9_1973.jpg encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_10-13_1973.jpg

    これは1973年に出版された「Encyclopédie de la vie sexuelle」の表紙。
    左が7〜9歳向け、右が10〜13歳向けです。

    画像出典:Musée national de l'Éducation
    クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

    読者と同年代の子供の写真を使うことで、子供たちに自分に関係ある内容だと理解させ、股間が見えている写真であることで人間の性に関する内容だと理解させ、そして男女のペアであることで将来の結婚に繋がる内容だと理解させる。
    性教育の教本としては、もっともわかりやすい表紙ではないでしょうか。

    当時は私も左側の本の子と同じくらいの歳でした。
    もしこの本の日本語版が出ていたら、日本の家庭でも1970年代の段階で正しい性教育ができていたかもしれませんね。

    Amazon.frより
    Encyclopédie de la vie sexuelle. de la physiologie à la psychologie. 7/9 ansCartonné – 1973
    Encyclopédie De La Vie Sexuelle De La Physiologie à La Psychologie 10 / 13 Ans . 1973



    【1980年】

    encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_7-9_1980.jpg encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_10-13_1980.jpg

    これは「Encyclopédie de la vie sexuelle」の1980年版の表紙。
    左が7〜9歳向け、右が10〜13歳向け。

    7〜9歳向けは遊んでいるシーンになり、10〜13歳向けは裸で身を寄せている写真になりました。
    10〜13歳といえば男女とも生殖が可能になる年齢ですから、横になって肌を密着させている写真は性行為推奨とも受け取られかねないのですが、この表紙は上半身のみの写真にすることでそれを防いでいます。
    その上で、幸せそうな顔としっかり繋いだ手によって、テーマが性教育であることを示しています。

    全身を見せる写真ではなくなったのは、この頃の性教育が医学的な教えから道徳的な教えへと移り変わる時期だったからかもしれません。
    つまり生殖の仕組みよりも、愛情を伴った性についてシッカリに教えようということではないでしょうか。

    Amazon.frより
    Encyclopédie de la vie sexuelle de la physiologie à la psychologie 7/9 ans Reliure inconnue – 1980
    Encyclopedie de la vie sexuelle de la physiologie a la psychologie 10/13 ans



    【1991年】

    encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_7-9_1991.jpg encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_10-13_1992.jpg

    1990年代に入ると表紙はこうなりました。
    仲の良さそうな男女の笑顔写真ですが、服を着ています。
    ポートレイト写真集かと思ってしまいそうなデザインですね。
    もはや表紙だけでは性教育の本であることがわからなくなってしまいました。

    本にとって表紙は大切な顔です。
    表紙だけで何の本なのか伝わらなくては意味がありません。
    しかも百科事典を銘打っているのですから、記念写真のようなツーショットには違和感を感じてしまいます。

    Amazon.frより
    Encyclopédie de la vie sexuelle des 7-9 ans / Verdoux, C/ Cohen, J / Réf: 29170Relié – 1991
    Encyclopédie de la vie sexuelle 10-13 ans Relié – 1992

    でもこれはまだ良いほうかもしれません・・・



    【1994年】

    encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_7-9_1994.jpg encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_10-13_1994.jpg

    これは1994年版の表紙。
    同じく着衣のポートレイトですが、なんと写真ではなくなってしまいました。

    綺麗な肖像画だとは思いますが、イラストにした理由はなんだったんでしょうか?
    子供や親にとってはこのほうが買いやすいんでしょうか?
    「水彩画入門」というタイトルのほうが似合いそうですね。

    Amazon.frより
    Encyclopédie de la vie sexuelle : 7-9 ans Poche – 1 février 1994
    Encyclopédie de la vie sexuelle : 10-13 ans Broché – 11 mars 1998

    さてこの「Encyclopédie de la vie sexuelle」という本、その後どうなったかと言いますと・・・



    【2003年】

    encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_7-9_2003.jpg

    こんな表紙になりました。(^^;)
    随分とまぁ砕けたというか、マンガチックになりましたね。
    気軽に買えるようにはなったかもしれませんが、百科事典としての威厳はなくなってしまいました。

    現在は他の出版社から同じようなタイトルの本が出ていますが、やはりどれもイラストの表紙です。
    これはフランスに限ったことではなく日本でも同じ。
    19XX年には表紙がヌード写真だった本が、20XX年に再発行されたらイラストになった、ということはよくあることです。

    性がテーマであるとはいえ、教育用の本までマンガチックに変える必要はあるのでしょうか?
    実感できる、共感できるということが性教育でのニーズなはずなのに。

    今の子供たちにどちらの本がわかりやすいかと問えば、たぶん現在売られている本を指すでしょう。
    しかし写真と漫画風なイラストのどちらがより「正確に」理解できるかといえば、写真でしょうね。

    性教育のように人の命に関わる教育の場合は、オブラートに包むような伝え方はするべきではないと思うのですが、皆さんはいかがお考えでしょうか?


    書籍「Encyclopédie de la vie sexuelle」の1973年版の内容に関しては、この動画で見ることができます。
    1978年に放映された映像で、オフィシャルの「Institut National de l'Audiovisuel」がYouTubeで公開しています。



    Les livres d'éducation sexuelle pour les enfants - Archive INA
    Copyright : Ina Styles
    関連記事

    タグ: Europa  少年  少女  ♂♀  Water  笑顔  Face  OldPhoto  絵画  動画 

    Le Jeune Modele Posant Dans L'Atelier

    jules_alexis_muenier-le_jeune_modele.jpg

    フランスの画家、ジュール=アレクシ・ミュニエ(Jules-Alexis Muenier/1863-1942)による作品「Le Jeune Modele Posant Dans L'Atelier」

    タイトルは「アトリエでの若いモデルのポーズ」という意味です。
    背中側なので年齢層がわかりにくいですが、11〜14歳といったところでしょうか。

    画家にとってヌード描画は基本のひとつですが、そのときのモデルは男女とも体毛の少ない少年少女のほうが適しているのでしょう。
    その上で世間からのあらぬ誤解を防ぐ意味でも、モデルに少年が多かったのは当然とも言えます。

    この絵は制作年が定かではありませんが、複数の画家と一緒に描いているので比較的初期の作品かもしれません。


    作者のミュニエは1863年にフランスのリヨンで生まれました。
    父親は「L'Aube」「L'Indépendant de l'Oise」などの書籍の編集長を務めたジャーナリストです。

    高校在学中に美術の才能を見出されたミュニエは、1881年にパリの美術学校「エコール・デ・ボザール」に入学し、画家のジャン=レオン・ジェロームの教室で学びました。

    1885年にオート=ソーヌ県のクルヴォンに移り住み、マリー・パリという女性と結婚。
    1887年にパリのサロンで入選し、その奨学金でスペインやモロッコを旅します。

    当時オリエンタリズムが流行していたモロッコには、ルイ=オーギュスト・ジラルドやルネ=グザヴィエ・プリネといった画家たちが滞在しており、彼もそこで多くを学びました。

    生涯に300以上の作品を描き上げたジュール=アレクシ・ミュニエ。
    彼は1911年に名誉あるレジオンドヌール勲章を受勲し、1921年には芸術アカデミーの会員に選ばれています。
    関連記事

    タグ: Europa  少年  絵画 

    L'education d'Orphee

    georges_callot-orphee.jpg

    フランスの画家、ジョルジュ・カロー(Georges Callot/1857-1903)による1884年の作品「L'education d'Orphee」

    湖のほとりで女性が横たわり、竪琴を奏でています。
    横では白鳥がくつろいでおり、そのそばでは少年が背筋を伸ばして遠くを見つめています。
    力を入れていることが手のポーズや右足の親指にも表れているので、歌を歌っているのかもしれませんね。

    この子はギリシア神話に登場する吟遊詩人、オルペウス(オルフェウス)の子供時代。
    オルペウスは竪琴の非常に巧みな人物で、彼が竪琴を奏でると森の動物たちや木々までもが耳を傾けたと言われています。

    オルペウルはその技をアポロン神から伝授されたそうですが、子供時代のこの絵では演奏しているのは女性のほうですね。
    タイトルを訳すと「オルペウスの教育」となるのですが、これはオルペウスが女性に教えているのか、女性がオルペウスに教えているのか、その点がハッキリしません。

    オルペウスといえば、毒蛇に噛まれて死亡した妻を冥界から取り戻すために自ら冥界に入り、その竪琴の音色で番犬ケルベロスさえもおとなしくさせた、というエピソードが有名です。
    しかしこれには後日談があります。

    結局、妻を取り戻すことができなかったオルペウスはその後「オルペウス教」という密儀宗教を始めます。
    オリュンポス十二神のひとりであるディオニューソスは新しい神を敬わないオルペウスに怒り、自分たちの女性信奉者たちにオルペウスを襲わせました。
    そしてオルペウスは狂乱する女性たちによって八つ裂きにされ、殺害されたのでした。

    竪琴の音色でケルベロスさえもおとなしくさせたオルペウスですが、信仰の違う女性たちには成す術がなかったようです。
    狂信とは恐ろしいものですね。

    作者のジョルジュ・カローについてはほとんど詳細不明です。
    彼の作品を掲載しているサイトは多いのですが、生い立ちや経歴に関する記述がまったく見つかりませんでした。
    関連記事

    タグ: Europa  少年  Water  ♂♀  絵画 

    モデル君は背中で語る - 3

    artistic_boysback00.jpg

    あなたが観光地で自分の写真を撮ろうとしたとき、セルフタイマー機能も自撮り棒も無いので、道ゆく人に「シャッターを押してください」と頼んだとします。
    するとその人が「じゃあ背中を向けて」と言うので、素直に後ろを向いたらシャッターの音が・・・。

    こんなことをされたら怒るか、あるいは戸惑いますよね?
    「私の顔は写す価値がないってこと?」と落ち込んでしまう人もいるかもしれません。
    絵でも同じですが、人物写真は基本的には顔が見える位置から捉えるものです。

    しかし絵画や写真作品の中には、あえて背中側を描写したものも少なくありません。
    人は後ろ姿も十分に芸術的であり、後ろ姿だからこそ伝えられる表現もあるからです。

    天使の後ろ姿を捉えた「モデル君は背中で語る」
    第3回目の今回は、よりアーティスティックな絵画作品と写真作品をセレクトしてみました。
    絵画と写真を交互に並べましたが、写真のほうは残念ながら作者不詳です。


    henry_scott_tuke-the_bather_1896.jpg nellie_joshua_dragonfly.jpg

    左はイギリスの画家、ヘンリー・スコット・タク(Henry Scott Tuke/1858-1929)による1896年の作品「The Bather」
    右はイギリスの画家、ネリー・ジョシュア(Nellie Joshua/1877-1960)による1905年の作品「The Dragonfly」

    モデルが背景の海を見つめているなら、当然後ろ向きになりますね。
    そこにあるのは喜びか?哀愁か?
    右側の妖精の絵はあえて後ろ向きにすることで、森の中をそうっと覗いているような雰囲気を醸しています。


    artistic_boysback01.jpg artistic_boysback02.jpg

    どちらも詳細不明、作者不詳の作品です。

    それぞれ湖と森で撮影された写真ですが、大自然の背景と人間の背中が妙にマッチしています。
    左はハイティーンで右は10歳くらいだと思いますが、こうして見ると成長の度合いがわかりますね。


    mogens_gad-drenge.jpg izzet_ziya-children_diving_into_the_sea.jpg

    左はデンマークの画家、モーゲンズ・ガード(Mogens Gad/1887-1931)による1914年の作品「Drenge i Hornbæk」
    右はトルコの画家、イゼット・ジヤ(Izzet Ziya/1880-1934)による作品「Children diving into the sea」

    船に向かって手を振る少年と、海で遊ぶ兄弟。
    どちらも表情は見えませんが、楽しんでいる様子がその後ろ姿から伝わってきます。


    artistic_boysback03.jpg artistic_boysback04.jpg

    楽しんでいるといえばこちらも同じ。

    左の写真は地面に水着が落ちているので、着替えの時におどけてポーズをとったのでしょう。
    スタンスといい背筋といい、男の子の元気さが表れている作品です。


    richard_muller-ruckenakt_eines_knaben.jpg unknown_male_nude.jpg

    左はドイツの画家、リチャード・ミュラー(Richard Muller/1874-1954)による1933年の作品「Rückenakt eines Knaben auf roter Matratze」
    右は1840年に描かれた作者不詳の作品ですが、たぶんアカデミーの生徒作品だと思います。

    人の後ろ姿は独立したオブジェのようでもあり、また背中側だからこそ伝えられる意図というのもあります。
    人によってそう大差のない背中ですが、それをどう造形するかは芸術家の技量といったところでしょうか。


    artistic_boysback05.jpg artistic_boysback06.jpg

    モデルに助けられているところもありますが、構図的に見事な作品ですね。
    どちらも背筋を伸ばしており、腕から背中、そして脚にかけての流線形が美しい。

    左の少年が手にしているのは流木でしょうか?
    このS字型の姿勢には、まさに流木の如く余計なものがそぎ落とされた美を感じます。


    日本の古い慣用句には「顔で笑って心で泣く」という言葉があります。
    また、アニメ「ルパン三世」のテーマ曲の歌詞には「背中で泣いてる男の美学」という言葉が登場します。

    つまり人の心は背中に表れ、それは男性のほうが顕著である、と考えて良いのではないでしょうか。
    そして後ろ姿を描写した絵画や写真は、人の心を表現するひとつの手段である、と考えても良いのではないでしょうか。


    関連記事
    モデル君は背中で語る - 1
    モデル君は背中で語る - 2
    関連記事

    タグ: Europa  少年  Water  絵画  OldPhoto 

    いらっしゃいませ

    現在の閲覧者数:
    このブログについて...

    RUKA

    Author:RUKA


    当ブログは子供を表現した世界の絵画、彫像、写真作品をご紹介しています。
    天使に見立てているので必然的に裸の作品が多くなりますが、すべてアートまたは家庭的な生活記録に限定しています。

    子供は本来この世界における夢であり希望であり、その姿は大人にとってノスタルジーや心の潤い、癒しの対象でもあります。

    古くから子供の姿は愛すべきものとして認識され、絵画や彫像、写真等で様々に表現されてきました。天使のイメージもそのひとつです。
    そして各家庭でも、我が子への愛情ある記録(写真撮影)が数多くなされています。

    当ブログではそれら子供や天使をテーマにしたアート作品と、写真共有サイトFlickrで一般公開されている子供写真をご紹介しています。(できるだけ天使の姿に近いものを選んでいます)

    ふと訪れては日々の疲れを癒す天使の園・・・そんな憩いの場としてお使いいただければ幸いです。

    画像の著作者は私を含め様々ですが、著作権的に問題のない方法で掲載しています。
    また、公序良俗に反する画像や違法な画像、猥褻な画像は一切ありません。
    【当ブログの掲載ポリシー】

    説明記事(お読みください)
    著者について...
    名前:RUKA (Rukachas)
    国籍:日本
    出身:埼玉(生まれは宮城)
    性別:男性
    年齢:あっという間の半世紀
    インターネット歴:22年

    20代の頃に仕事で幼稚園に出向いたのを機に子供の笑顔写真を撮り始める。
    1999年に「The Light of Smile 笑顔の灯り」という子供の笑顔をテーマにしたサイトを開設。
    サイト終了後はこのブログで世界の天使像や世界の子供写真を紹介している。
    6人の甥と姪の伯父さんでもある。

    メールアドレス: ruka_rukachas@ybb.ne.jp
    RUKAのサイト・ブログ
    メッセージフォーム

    名前:
    メール:
    件名:
    本文:

    アクセスの国別比率
    Flag Counter
    アンケート
    ユーザー掲示板
    Translation
    ブログ内検索
    アートギャラリー
    RUKAのアルバム
    カテゴリ
    タグ

    少年 Europa 少女 Water ♂♀ 笑顔 America 衣装 水着 Face Asia CC-License イベント 彫像 スポーツ 日本 絵画 風呂 RUKA 伝統 OldPhoto ペイント ダンス Thong 眠り Africa 音楽紹介 Oceania ProModel 造形比較 動画 

    最新記事
    楽しい組体操 2019/04/19
    デオドラント 2019/04/18
    モンロー? 2019/04/17
    Goethe Denkmal 2019/04/16
    天使たちへの「ありがとう」 2019/04/15
    少年サッカー 2019/04/14
    書籍「Devoirs de Vacances」 2019/04/13
    立ちションガール 2019/04/12
    アンケートを新設しました 2019/04/11
    天使のいる川 2019/04/11
    日別表示
    03 | 2019/04 | 05
    - 1 2 3 4 5 6
    7 8 9 10 11 12 13
    14 15 16 17 18 19 20
    21 22 23 24 25 26 27
    28 29 30 - - - -
    月別表示
    おすすめサイト
    Pro Photographer