絵画で眠る少年たち - 2

    眠る少年が描かれている西洋絵画をいくつかご紹介します。

    なぜ少年限定なのかと言うと、眠っている子供を描いた作品の場合、少女よりも少年のほうが圧倒的に多いからです。
    個別の記事では眠る少女も紹介していますが、まとめるとなると少年ばかりになるのは仕方ありません。

    裸のまま寝てしまうのは娘よりも息子のほうが多く、画家にとっては身近な寝姿のモデルと言えるでしょう。
    またキューピッドや神話の登場人物として捉えた場合も、少年のほうがイメージに合いやすいという理由もあるでしょうね。


    aldo_bahamonde_rojas-miguel.jpg

    スペインの画家、アルド・バハモンデ・ロハス(Aldo Bahamonde Rojas/1963- )による1994年の作品「Miguel」

    タイトルはこの子の名前です、ミゲル君。
    地面に寝ているのかと思いましたが、フチがあるのでたぶん茶色のシーツを敷いたベッドに寝ているんでしょうね。
    完全に熟睡しているであろう少年の、脱力した筋肉の質感が上手く表現されています。


    paul_albert_laurens-adolescent.jpg

    フランスの画家、ポール・アルバート・ローレンス(Paul Albert Laurens/1870-1934)による作品「Adolescent」

    「思春期」という意味。制作年は不明です。
    股間が見えていないので性別がハッキリしませんが、体形を見る限り少年ではないでしょうか。
    これも作者がベッドで眠る自分の息子を描いたものだと思います。


    oskar_zwintscher-knabe_lilie.jpg

    ドイツの画家、オスカー・ツヴィンシャー(Oskar Zwintscher/1870-1916)による1904年の作品「Knabe und Lilie」

    タイトルは「少年とユリ」という意味で、眠っているのではなく横になっているだけですね。
    水仙の花であればギリシア神話に登場するナルキッソスのイメージと重なりますが、ユリなので神話とは関係ないのかもしれません。
    奥が壁で下が石畳ですが、場所は風呂場かプールでしょうか?


    leon_bazille_perrault-amour.jpg

    フランスの画家、レオン=バジール・ペロー(Léon Bazille Perrault/1832-1908)による作品「Le reveil de l'Amour」

    これも眠っているシーンではないですね。制作年は不明です。
    鳥たちの爽やかな歌声で目覚めた可愛らしい天使くん。
    1羽の鳥がコーラスの指揮をとっていたりと、物語のひとコマのようなファンタジックな作品です。


    michelangelo_caravaggio-sleeping_cupid.jpg

    イタリアの画家、ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(Michelangelo Merisi da Caravaggio/1571-1610)による1608年の作品「Sleeping Cupid」

    ローマ神話の愛の神、クピドが眠っているところです。
    矢の筒を枕にしていますね。
    いつも他人の愛を翻弄しているクピドですが、夢の中では自分が主役の愛の物語でも見ているのでしょうか?


    pierre_subleyras-amour_et_psyche.jpg

    イタリアの画家、ピエール・シュブレイラス(Pierre Subleyras/1699-1749)による1733年の作品「Amour et Psyche」

    これはギリシア神話の愛の神アモルと、その妻である人間プシュケの物語。
    姉たちにそそのかされたプシュケが姿を見せぬ自分の夫を殺害しようと寝室に行くと、そこにいたのはアモルであった、というシーン。
    このあとプシュケは蝋燭のロウを垂らしてアモルに火傷を負わせてしまうのですが、アモルはどこを火傷したんでしょうか?


    rocco_normanno-amorino_dormie.jpg

    イタリアの画家、ロッコ・ノルマンノ(Rocco Normanno/1974- )による2009年の作品「Amorino Dormiente」

    タイトルは「寝ているアモル」という意味なので、この少年をアモルに例えているんですね。
    たぶんアトリエで息子にモデルをしてもらったのでしょう。
    窓から差し込む斜めの光により、体の形がシッカリと表現されています。


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    Frühling

    ludwig_von_hofmann-fruhling.jpg

    ドイツの画家、ルートヴィヒ・フォン・ホフマン(Ludwig von Hofmann/1861-1945)による1895年の作品「Frühling」
    ドイツ東部の都市ドレスデンにあるノイエ・マイスター絵画館が所蔵しています。

    タイトルは訳すと「春」
    水辺で楽しそうに遊んでいる兄弟たちを描いた油彩で、春の訪れと人々の喜びが明るい色彩で表現されています。
    丘の上に見える人影はこの子たちの両親でしょうか?

    春といえば日本でも花見に代表されるように草花がより身近になる季節ですが、この絵のように天使たちが遊んでいる光景だったらさらに癒されますね。
    もちろん花より目立ってしまってはいけませんが。

    作者のホフマンは1861年、ドイツのダルムシュタットの生まれ。
    プロイセンの政治家でありヘッセン大公国の首相を務めたカール・ホフマンの息子として生まれました。

    1883年からドレスデンの美術アカデミーで美術を学び、1889年にはフランスのアカデミー・ジュリアンに入学。
    フランス人芸術家の影響を多大に受けた彼は、1890年からベルリンでフリーの芸術家として活動しました。

    アールヌーボーに影響を与えた雑誌「Pan」にイラストを寄稿するなどし、1896年にはベルリンの国際美術展でメダルを獲得。
    1899年に結婚し、その後ヴァイマルやドレスデンの美術学校の教授を務めました。

    彼は1920年頃まで、象徴主義とアールヌーボー様式を併せ持つ独自の作品を描き続けます。
    しかし1930年代になるとナチスによってそれらの作品が「退廃芸術」と非難され、彼は人々からも次第に忘れ去られていきました。
    彼の作品が再び脚光を浴び始めたのは1990年代になってからのことです。

    心温まる光景を描いた彼の作品が非難されるというのは、恐ろしい時代ですね。
    やはり戦争は人の心を歪ませてしまうのでしょう。


    画像出典:Frühling - Ludwig von Hofmann
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    アンノウン - 2

    ネットを辿りながら絵画や彫刻を鑑賞していると、たまにUnknown Artist、つまり作者不詳の作品を目にします。
    私が知らないということではなく、作者不詳として紹介されている作品。

    と、2年前の記事と同じ始まり方ですが・・・
    今回も同じく、ちょっと気になった「作者不詳のアート作品」をご紹介します。


    【絵画作品】

    french_painter-l’etude_de_dessin

    フランスのモンペリエにあるファーブル美術館が所蔵している19世紀の絵画。
    作者名と制作年が不明です。

    小さな彫像を見ながらデッサンの練習をしているふたりの少年。
    壁には手の形をしたオブジェが飾られており、美術の授業風景であることをうかがわせます。

    もしかしたらこの絵も同じ学校の生徒によるものかもしれませんね。
    あるいは美術教師の作品かも。


    【彫刻作品】

    thailand-unknown_artist.jpg

    タイのどこかの施設にあるブロンズ像だそうです。
    あまり写実的とは言えない造形ですが、商業施設のエントランスなどには似合いそうですね。

    肩に掛けた布、頭と足の装飾などは古いギリシア彫刻を思わせますが、視線を落とした優しい顔立ちや観音菩薩のような手付きからはどことなくアジアっぽさを感じさせます。

    それでいて突起した乳首や長い陰茎という独自の自己主張もあるようですし、もしかしたら古い彫刻をモチーフに作られた現代作品かもしれません。


    【写真作品】

    unknown_photographer.jpg

    かなり古い写真だと思いますが、これも作者不詳、詳細不明です。
    天使のような髪型をした少年が建物の壁に手をついて佇んでいます。
    演出なのかハッキリしませんが、ちょっと寂しそうにうなだれているのが気になります。

    コンクリートの無機質な空間に少年のなだらかな姿態が上手く溶け込んでおり、縦の柱が額縁のような効果を出しているところも面白いですね。

    堕天使を思わせる退廃的な雰囲気ですが、奥行きのある背景とともに奥深い意図を感じさせる作品です。


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    Prüfung des ersten Flügels

    sacrevoir-prufung_des_ersten_flugels.jpg

    ドイツの画家、サクレボワール(Sacrevoir/1964- )による絵画作品「Prüfung des ersten Flügels」
    制作年はわかりませんでした。

    タイトルは日本語に訳すと「最初の翼の検討」となります。
    ソファーの上でひとりの少年が眠っていて、その横に翼が無造作に置いてあります。
    この翼は仮装などで使う、背負うタイプの衣装でしょうね。

    右側の少年がその翼を拾い上げようとしています。
    同時に自分の腰に巻いてあるタオルを外そうともしており、タイトルのとおり天使になることを検討しているのかもしれません。

    とは言っても、舞台の天使役を検討しているわけではないでしょう。
    たぶんこの絵は比喩的な表現なのだと思います。
    どのような意味なのかは、見る者の受け取り方次第といったところでしょうか。

    作者のサクレボワールはベルリンを拠点として活動する現代画家のひとり。
    1964年にベルリンで生まれた彼は、数学と視覚芸術(絵画)を学んでプロの画家となりました。

    若者たち、とくに少年のか弱さや静けさ、美しさを絶妙なタッチで描き、これまでにベルリンやミュンヘン、アムステルダムなどで数々の個展を開いています。

    オフィシャルサイトでは、独自の味わいを持った彼の作品が存分に堪能できます。


    【SACREVOIR】
    http://www.sacrevoir.de
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    La petite baigneuse

    thomas_couture-la_petite_baigneuse.jpg

    フランスの画家、トマ・クチュール(Thomas Couture/1815-1879)による1849年の作品「La petite baigneuse」
    ロシアのエルミタージュ美術館が所蔵している作品で、日本語では「小さな水浴者」というタイトルが付けられています。

    10歳くらいの少女が岩の上に腰掛けている絵ですね。
    少女の横にはリンゴが置いてあり、その下には十字架の付いた赤い布があります。

    水浴とは水に浸かることですが、この子の足下に池があるということでこのタイトルなのでしょう。
    しかしこれは作者が付けたタイトルではないのかもしれません。

    というのも、この絵は1850年代後半にロシアの美術収集家が所有し、その後「ロシア芸術アカデミー美術館」に移されたのですが、1868年の展示目録では「森の中の少女」というタイトルだったからです。

    この絵は背景に情報がほとんど含まれておらず、見えるのは葉っぱと岩だけですが、そこにいる少女が裸であることに何か理由が必要だったのでしょうか?

    水浴をしているから、というのはもっともらしい説明ではありますが、初めの「森の中の少女」というタイトルのほうがこの作品には相応しいような気がします。

    「森の中になぜ裸の少女が?」「きっと精霊なのだろう」
    それでイイんじゃないでしょうか。


    作者のトマ・クチュールは1815年、フランスのオワーズ県サンリス生まれ。
    11歳のときに家族とパリに移り住み、やがて国立の工芸学校とエコール・デ・ボザールで美術を学びます。

    彼はフランス国家による奨学金付き留学制度「ローマ賞」に6回も挑みますが、ことごとく失敗。
    7回目の挑戦でようやく受賞を手にし、1840年からサロンに歴史画と風俗画を出展し始めました。

    彼の革新的なテクニックは各所から注目されますが、政府や教会から依頼された壁画制作に関しては良い成果を上げることができず、このことで批判を浴びてしまいます。

    その批判に耐えられなかった彼は1860年に故郷のサンリスに戻り、その後は美術教師として若い画家たちの指導にあたりました。
    1879年3月にパリ郊外の街ヴィリエ・ル・ベルにて63歳で亡くなりました。


    画像出典:ウィキメディア・コモンズ
    File:Couture, Thomas - Little Bather.jpg
    ライセンス:パブリックドメイン
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    Gymnasion

    sascha_schneider-gymnasion.jpg

    ドイツの画家、サシャ・シュナイダー(Sascha Schneider/1870-1927)による1912年の作品「Gymnasion」

    Gymnasionは「ギュムナシオン」と読みます。
    ギュムナシオンとは、古代ギリシアにて運動競技選手が訓練をおこなった施設のこと。

    競技者育成のために作られた公共施設で、施設内では全裸であることが義務付けられていました。
    ギュムナシオンという名称もギリシャ語で「裸の...」を意味する γυμνός (gymnos)という言葉に由来しています。

    学校と同じように教師やトレーナーがおり、若者に対して肉体的鍛錬をおこなっていました。
    当初は18歳以上専用の施設でしたが、やがて子供への教育施設としても使われるようになり、体育だけでなく道徳や倫理の授業もそこでおこなわれたそうです。

    この絵は教師の前で整列したシーンでしょうか。
    身長や体格に個人差がありますね。
    どのような鍛錬がおこなわれたのかは資料がないのでわかりませんが、向かって右端の華奢な少年もやがてはたくましい競技者となるのでしょう。

    palestra_pompeii.jpg
    【ポンペイにあるギュムナシオンの遺跡】

    画像出典:ウィキメディア・コモンズ
    File:Gymnasion.jpg
    ライセンス:パブリックドメイン
    File:Palestra, Pompeii.jpg
    クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


    この絵を描いたドイツの画家、サシャ・シュナイダーは1870年にロシアのサンクトペテルブルクで生まれました。
    1889年にドイツのドレスデン美術アカデミーに入学し、その後は本のカバーイラストを制作するイラストレーターとなりました。

    1900年代に入ってからはドイツとイタリアで交互に生活していましたが、第一次世界大戦が始まると再びドイツに戻り、その後仲間とともに「クラフト・クンスト」という芸術のための研究所を設立します。

    しかし晩年は糖尿病を患い、船での旅行中に糖尿病による発作を起こして亡くなりました。
    現在はドイツのドレスデンにあるロシュヴィッツ墓地に埋葬されています。


    彼の1912年の作品「Gymnasion」は整列している古代ギリシアの少年たちを描いていますが、このように身長の違う裸の子供を横に並べた写真をどこかで見たことはありませんか?

    そう、医学書や保健体育の資料などに載っている、人間の成長を記録した学術写真にそっくりです。


    the_adolescent_period.jpg
    書籍「The Adolescent Period」より

    これはアメリカの医学博士、フランク・ケイリー・シャトルワース(1899-1958)が1951年に発表した書籍「The Adolescent Period」に掲載されている写真。
    子供の成長に関する研究論文で、ある少年の10歳から17歳までの体の変化を記録したものです。

    シャトルワースは1938年にも同様の書籍を出しており、その本は現在Googleブックスで全ページが公開されています。

    Googleブックスより
    「The Adolescent Period: A Graphic and Pictorial Atlas」


    croissance_d_un_garcon_sur_10_ans.jpg
    「Croissance d un garcon sur 10 ans」

    そしてこれは著作者不明ですが、ある母親が撮影した息子の10年間の成長記録だそうです。

    見たところ5歳から15歳くらいまででしょうか。
    年齢が記載されておらず、見た目の大きさが揃えられているため身長の変化がわかりませんが、正面から捉えているので体形の変化はよくわかりますね。
    幼少期にぽっちゃりしていた男の子が、第二次性徴が見られるあたりから筋肉が発達し、体が引き締まってくる様子が見てとれます。

    母親は医学の関係者だったのか、それとも一般の人だったのか?
    学術研究のための撮影だったのか、それとも単なる家族写真か?
    そのへんの詳細はまったく不明ですが、医学的には大変貴重な記録です。

    また、息子さんが思春期に入ってからもモデルを続けたのは、幼い頃からの習慣もあるでしょうが、何よりも家族の愛情あらばこそだと思います。


    子供の健康に運動が深く関係しているという考え方は古代ギリシアに始まり、現代にも根付いています。

    画家のサシャ・シュナイダーが「Gymnasion」を描くときにこのような学術写真をモチーフとしたかどうかは定かではありませんが、その見た目の類似性同様、根底にあるのはどちらも、子供の成長と健康を願う心なのでしょう。
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    Die Nymphe der Düssel

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    ドイツの画家、エドゥアルド・シュタインブルック(Eduard Steinbrück/1802-1882)による1837年の作品「Die Nymphe der Düssel」

    物思いにふけるようなちょっと虚ろな眼差しで佇んでいる少女。
    大人の女性にも見えますが、胸の膨らみ具合から言ってたぶん10代でしょう。

    タイトルは訳すと「デュッセルのニュンペー」となりますが、デュッセルとはドイツの都市デュッセルドルフを流れる「デュッセル川」のことで、ニュンペーとは英語で言うとニンフ、つまり精霊です。
    「デュッセル川の精霊」という意味ですね。

    精霊は非常に長生きで、いつまでも美貌を保つそうですが、それゆえに退屈な日々を送ることもあるのでしょう。

    と言うのも、花を咲かせたり人間の病を治すなど人々に恩恵を与える精霊がいる反面、一方では粗野な面を持つ精霊もおり、森の中を歩く人間を魔力で惑わせたり、とり憑いて正気を失わせることもあるそうです。

    人間の若者に恋をして強引にさらっていくこともあり、Nympheという言葉は女性の過剰性欲を意味するニンフォマニアという言葉の語源でもあります。

    この絵が人間の少女を描いたものならば「片思いの少女」とか「家事手伝いも楽じゃない」というタイトルが思い浮かびますが(浮かばないか...)、もし悪事をする精霊なのだとしたら、この表情にも何か怖いものを感じてしまいますね。

    作者のエドゥアルド・シュタインブルックは1802年、ドイツのマクデブルク生まれ。
    ベルリンの美術学校にて、画家のカール・ウィルヘルム・ワッハ(1787-1845)の指導を受けました。

    神話や伝説などの歴史画を描き続けた彼は、1876年に引退し、1882年に亡くなりました。
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    ルノワールの絵画作品

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    フランスの画家、ピエール=オーギュスト・ルノワール(Pierre-Auguste Renoir/1841-1919)による1880年の作品「Portrait d'Irène Cahen d'Anvers」

    日本では「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢の肖像」と呼ばれている作品です。

    描かれているのは、ベルギーのアントワープ出身のルイ・カーン・ダンヴェール伯爵の長女、イレーヌちゃん8歳。
    多くの印象派の絵画の中で「最も美しい肖像画」とも称され、日本でも人気の高い作品のひとつです。

    画像出典:ウィキメディア・コモンズ
    File:Pierre-Auguste Renoir, 1880, Portrait of Mademoiselle Irène Cahen d'Anvers, Sammlung E.G. Bührle.jpg
    ライセンス:パブリックドメイン


    絵画に造詣がない人でも「ルノワール」という名前は聞いたことがあるでしょう。
    優しく温かなタッチで幸福感あふれる作品を描いた、世界的に有名なフランスの画家です。

    女性の美を追求し続けた彼の作品には、美しい裸婦や可愛らしい少女の肖像画が多数残されています。
    その中でもとくに有名なのが、このイレーヌちゃんの肖像画。

    しかし今回ご紹介するのは、そういった作品ではないのです。

    ルノワールが生涯でたった一度だけ、少年を描いていたことをご存知でしょうか?
    彼が描いた唯一の少年の絵がこちら。

    pierre_auguste_renoir-le_garcon_au_chat.jpg

    ルノワールが1868年、27歳のときに描いた「Le garçon au chat」(猫と少年)という作品。
    現在はパリのオルセー美術館が所蔵しています。

    10代前半と思われる少年が、台の上の猫に寄り添って立っています。
    おだかやな表情からは幸せなひとときであることを感じさせます。
    柔らかく手を組む仕草、艶やかな後ろ姿には、女性モデルのような色っぽさがありますね。

    じつはこの少年、当時の男娼ではないかと言われています。
    男娼とは、売春や性的サービスを仕事としている男性のこと。(男性の娼婦という意味)

    当時パリでは女性の売春は条件付きで認められていましたが、男性の売春は違法行為でした。
    そのため街頭で大っぴらに活動する者は少なく、多くの男娼は売春宿でこっそりと働いていました。
    この少年の素性も明確には語られていませんが、売春宿で働いていた少年の可能性があるそうです。

    ルノワールは同性愛者ではありませんし、この前年には愛人との間に子供も生まれているので、単なる絵のモデルとして雇っただけでしょう。
    しかし少年は絵画モデルというこの仕事に、束の間の安らぎを覚えたのではないでしょうか。


    ルノワールは1841年、決して裕福ではない仕立て屋の六男として生まれました。
    13歳から陶器の絵付け職人となりましたが、やがて陶器印刷の機械が発明され、彼は職を失ってしまいます。

    その後、画家の道を志して21歳でシャルル・グレールのアトリエに入り、そこでモネやシスレーらと出会います。
    彼は印象派の画家として活動を始め、いくつかの展覧会に参加して入選を果たします。
    とくに女性を明るく華やかに描いた作品は人々の好評を博し、肖像画家としても成功を収めました。

    しかし晩年はリウマチを患い、車椅子の生活となってしまいます。
    彼は痛む手に絵筆を縛り付け、そんな状態であっても精力的に絵を描き続けました。

    1919年12月3日、亡くなったその日もアネモネの花の絵を描いていたそうです。


    ルノワールの作品には暗い絵がひとつもなく、描かれている人々はみな楽しそうに微笑んでいます。
    彼は生涯一貫して、人々の幸せそうな様子を描き続けました。

    「君はなぜ綺麗で愛らしい絵ばかりを描くんだ?」
    他人からそう問われた彼は、こう答えたそうです。

    「芸術が愛らしいものであってなぜいけないんだ? 世の中は不愉快なことだらけじゃないか」

    ルノワールは自分の作品が誰かの家に飾られることを常に意識し、「絵は家を明るくするものでなければならない」という信念を持っていたそうです。

    男娼の少年をモデルに絵を描いたのも、せめて絵の中だけでも安らいでいてほしい、微笑んでいてほしい・・・そんな思いがあったからかもしれません。
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    The Education of Achilles

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    イタリアの画家、ジョヴァンニ・バッティスタ・チプリアーニ(Giovanni Battista Cipriani/1727-1785)による絵画2点。
    英語でのタイトルは左が「The Education of Achilles」右が「Chiron Instructing Achilles in the Bow」で、どちらも1776年頃の作品です。

    立派な髭をたくわえた男性が少年に槍投げと弓矢を教えているところですが、よく見るとこの男性、下半身が馬です。
    馬並みではなく、本当に馬。
    少年は体付きからすると10代半ばといった感じですね。

    スポーツの指導は手取り足取り、いろんなところを取りながら教えるものですが、現代では当人そっちのけで第三者がセクハラだのパワハラだとの騒ぐことがあるので大変です。
    この絵は神話の世界なのでふたりとも裸ですが、きっと良い師弟関係なのでしょう。

    さてこのふたりはいったい誰なのかと言いますと、おっさんのほうはギリシア神話に登場する半人半馬の怪物、ケイローン。
    ペリオン山に住み、死後は天に召されて射手座になったと言われています。

    ケイローンは農耕の神クロノスと精霊のピリュラーのあいだに生まれました。
    父クロノスが浮気をして、妻の目を逃れるために馬に姿を変えてピリュラーと性交したため、このような姿で生まれてしまったそうです。

    一般に野蛮で粗暴だと言われている半人半馬のケンタウロス族の中でケイローンは例外的な存在であり、賢者として知られています。
    彼はヘラクレスやカストール、イアーソーンなどの英雄たちに武術や馬術を教え、アスクレピオスには医術を授け、そして少年期のアキレウスの教育係でした。

    この絵に描かれている少年こそが、そのアキレウスです。

    アキレウスはプティーアの王であるペーレウスと、海の女神テティスとのあいだに生まれました。
    生まれるとすぐ母テティスは息子を不死身にするため、彼のかかとを持って冥府を流れるステュクス川の水に浸します。

    ステュクス川の水は生き物を不死にする効力があり、このことでアキレウスは不死となるのですが、テティスの手が彼のかかとを掴んでいたため、かかとだけは水が浸からず不死とはなりませんでした。

    その後、テティスがアキレウスを養育しなかったため、父ペーレウスはアキレウスを賢者であるケイローンに預けます。
    ケイローンはアキレウスの養育および教育係として、アキレウスを立派な勇者へと育て上げました。

    後にアキレウスはトロイア戦争においてミュルミドーン人を率いて50隻の船と共に参戦し、たったひとりで敵の名将を討ち取るなどの大活躍を見せます。
    しかし戦争に勝利する前に、唯一の弱点である足のかかとを矢で射抜かれてしまい、命を落としたのでした。

    アキレウスはラテン語では「アキレス」
    足のかかとからふくらはぎにかけての腱を「アキレス腱」と言いますが、これは彼のこの故事に因んで名付けられました。

    今回は登場人物の説明だけで長くなってしまったので、作者であるジョヴァンニ・バッティスタ・チプリアーニについてはまた今度。(^-^)/


    画像出典:ウィキメディア・コモンズ
    File:Giovanni Battista Cipriani - The Education of Achilles, 1776.jpg
    File:Giovanni Battista Cipriani - Chiron Instructing Achilles in the Bow, 1776.jpg
    ライセンス:パブリックドメイン
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    書籍「Encyclopédie de la vie sexuelle」

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    フランスで出版されている「Encyclopédie de la vie sexuelle」という書籍。

    日本語に訳すと「性の百科事典」となるので若い夫婦のためのHow-To本かと思ってしまいますが、実際は子供向けの性教育図鑑であり、子供たちが正しい性の知識を身につけるための児童図書です。

    同じタイトルで4〜6歳向け、7〜9歳向け、10〜13歳向け、14〜16歳向けの4種類が発売されており、上の画像は7〜9歳向けの本の内容の一部です。
    (画像出典:2ememain.be)

    4人の医師によって書かれたこれらの本は、人間の成り立ち、仕組み、生殖、出産、避妊などについて丁寧にわかりやすく解説しており、非常にデリケートな問題である性について親と子の対話を促進することにも役立っています。

    出版社は1826年から続くフランスの老舗出版社「Hachette Livre」のユース部門である「Hachette Jeunesse」
    この本は1970年代から数年置きに内容を見直しながら出版されてきました。

    初期の頃は性そのものよりも生殖に重点が置かれ、同性愛に関する記述はなく、反対に現在売られている本では同性愛も扱っているなど、社会の変化に合わせて内容も変化しています。

    しかしそれよりも大きな変化は、年代ごとの表紙の移り変わりです。
    これはフランスに限らず日本でもよく見る傾向ですが・・・まぁとにかく見ていきましょう。


    【1973年】

    encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_7-9_1973.jpg encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_10-13_1973.jpg

    これは1973年に出版された「Encyclopédie de la vie sexuelle」の表紙。
    左が7〜9歳向け、右が10〜13歳向けです。

    画像出典:Musée national de l'Éducation
    クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

    読者と同年代の子供の写真を使うことで、子供たちに自分に関係ある内容だと理解させ、股間が見えている写真であることで人間の性に関する内容だと理解させ、そして男女のペアであることで将来の結婚に繋がる内容だと理解させる。
    性教育の教本としては、もっともわかりやすい表紙ではないでしょうか。

    当時は私も左側の本の子と同じくらいの歳でした。
    もしこの本の日本語版が出ていたら、日本の家庭でも1970年代の段階で正しい性教育ができていたかもしれませんね。

    Amazon.frより
    Encyclopédie de la vie sexuelle. de la physiologie à la psychologie. 7/9 ansCartonné – 1973
    Encyclopédie De La Vie Sexuelle De La Physiologie à La Psychologie 10 / 13 Ans . 1973



    【1980年】

    encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_7-9_1980.jpg encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_10-13_1980.jpg

    これは「Encyclopédie de la vie sexuelle」の1980年版の表紙。
    左が7〜9歳向け、右が10〜13歳向け。

    7〜9歳向けは遊んでいるシーンになり、10〜13歳向けは裸で身を寄せている写真になりました。
    10〜13歳といえば男女とも生殖が可能になる年齢ですから、横になって肌を密着させている写真は性行為推奨とも受け取られかねないのですが、この表紙は上半身のみの写真にすることでそれを防いでいます。
    その上で、幸せそうな顔としっかり繋いだ手によって、テーマが性教育であることを示しています。

    全身を見せる写真ではなくなったのは、この頃の性教育が医学的な教えから道徳的な教えへと移り変わる時期だったからかもしれません。
    つまり生殖の仕組みよりも、愛情を伴った性についてシッカリに教えようということではないでしょうか。

    Amazon.frより
    Encyclopédie de la vie sexuelle de la physiologie à la psychologie 7/9 ans Reliure inconnue – 1980
    Encyclopedie de la vie sexuelle de la physiologie a la psychologie 10/13 ans



    【1991年】

    encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_7-9_1991.jpg encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_10-13_1992.jpg

    1990年代に入ると表紙はこうなりました。
    仲の良さそうな男女の笑顔写真ですが、服を着ています。
    ポートレイト写真集かと思ってしまいそうなデザインですね。
    もはや表紙だけでは性教育の本であることがわからなくなってしまいました。

    本にとって表紙は大切な顔です。
    表紙だけで何の本なのか伝わらなくては意味がありません。
    しかも百科事典を銘打っているのですから、記念写真のようなツーショットには違和感を感じてしまいます。

    Amazon.frより
    Encyclopédie de la vie sexuelle des 7-9 ans / Verdoux, C/ Cohen, J / Réf: 29170Relié – 1991
    Encyclopédie de la vie sexuelle 10-13 ans Relié – 1992

    でもこれはまだ良いほうかもしれません・・・



    【1994年】

    encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_7-9_1994.jpg encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_10-13_1994.jpg

    これは1994年版の表紙。
    同じく着衣のポートレイトですが、なんと写真ではなくなってしまいました。

    綺麗な肖像画だとは思いますが、イラストにした理由はなんだったんでしょうか?
    子供や親にとってはこのほうが買いやすいんでしょうか?
    「水彩画入門」というタイトルのほうが似合いそうですね。

    Amazon.frより
    Encyclopédie de la vie sexuelle : 7-9 ans Poche – 1 février 1994
    Encyclopédie de la vie sexuelle : 10-13 ans Broché – 11 mars 1998

    さてこの「Encyclopédie de la vie sexuelle」という本、その後どうなったかと言いますと・・・



    【2003年】

    encyclopedie_de_la_vie_sexuelle_7-9_2003.jpg

    こんな表紙になりました。(^^;)
    随分とまぁ砕けたというか、マンガチックになりましたね。
    気軽に買えるようにはなったかもしれませんが、百科事典としての威厳はなくなってしまいました。

    現在は他の出版社から同じようなタイトルの本が出ていますが、やはりどれもイラストの表紙です。
    これはフランスに限ったことではなく日本でも同じ。
    19XX年には表紙がヌード写真だった本が、20XX年に再発行されたらイラストになった、ということはよくあることです。

    性がテーマであるとはいえ、教育用の本までマンガチックに変える必要はあるのでしょうか?
    実感できる、共感できるということが性教育でのニーズなはずなのに。

    今の子供たちにどちらの本がわかりやすいかと問えば、たぶん現在売られている本を指すでしょう。
    しかし写真と漫画風なイラストのどちらがより「正確に」理解できるかといえば、写真でしょうね。

    性教育のように人の命に関わる教育の場合は、オブラートに包むような伝え方はするべきではないと思うのですが、皆さんはいかがお考えでしょうか?


    書籍「Encyclopédie de la vie sexuelle」の1973年版の内容に関しては、この動画で見ることができます。
    1978年に放映された映像で、オフィシャルの「Institut National de l'Audiovisuel」がYouTubeで公開しています。



    Les livres d'éducation sexuelle pour les enfants - Archive INA
    Copyright : Ina Styles
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    当ブログは子供を表現した世界の絵画、彫像、写真作品をご紹介しています。
    天使に見立てているので必然的に裸の作品が多くなりますが、すべてアートまたは家庭的な生活記録に限定しています。

    子供は本来この世界における夢であり希望であり、その姿は大人にとってノスタルジーや心の潤い、癒しの対象でもあります。

    古くから子供の姿は愛すべきものとして認識され、絵画や彫像、写真等で様々に表現されてきました。天使のイメージもそのひとつです。
    そして各家庭でも、我が子への愛情ある記録(写真撮影)が数多くなされています。

    当ブログではそれら子供や天使をテーマにしたアート作品と、写真共有サイトFlickrで一般公開されている子供写真をご紹介しています。(できるだけ天使の姿に近いものを選んでいます)

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    国籍:日本
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    20代の頃に仕事で幼稚園に出向いたのを機に子供の笑顔写真を撮り始める。
    1999年に「The Light of Smile 笑顔の灯り」という子供の笑顔をテーマにしたサイトを開設。
    サイト終了後はこのブログで世界の天使像や世界の子供写真を紹介している。
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