美を学ぶこと・美であること

【ルーブル美術館にて、彫像を鑑賞する子供たち】
画像出典:ウィキメディア・コモンズ
File:School children in Louvre.jpg
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
学校での理科の実験の授業が年々減り続けている...という話を聞いたことがあります。
子供たちは実験に興味があるのに、学校側は他の教科に時間を割いて、結果的に「子供の理科離れ」という言葉で語られています。
しかしそれ以上に深刻なのが美術の授業。
近年は小学校の図画工作や中学校の美術の授業数がどんどんと削られています。
学校が心を育てる場でもあるなら美術という教科はとても大切なのに、大人はそれを重要視していないという有様。
学校で美術を学ぶ意味とはなんでしょうか?
学ぶというと堅苦しさがありますが、要するに興味を持つことの意味です。
絵を上手に描けるようになるため?
いや、将来それを仕事にするのでなければ必要ないことです。
芸術の深さを理解するため?
いや、そんな哲学的なこと、社会ではなんの役にも立ちません。
モノ作りの楽しさを覚えるため?
いや、それは美術科以外でも得られることです。
ではなんなのか?
私は美術を学ぶ意味とは「人間を知り、人間を好きになること」だと思っています。
私が子供の頃から美術作品を好きなのは、人間が誰しもひとつだけ持っている「心の器」を表現しているからです。
人を知ることは己を知ることであり、それは思いやりを育むためにも必要なこと。
たとえ風景画や静物画であっても、作者の生い立ちや作品への思いから人間のなんたるかを知ることはできます。

【トレチャコフ美術館にて、裸体像を鑑賞する子供たち】
人の体を「誰もが持っている心の器」と言いましたが、これを素晴らしいものと感じるか嫌らしいものと感じるかは人それぞれです。
しかし子供たちは初めから偏った見方をするべきではなく、その判断を己の感覚に委ねるためのひとつが美術の授業なのだと私は思います。
子供たちは美術作品の裸体像から人間を学び、自分を学びます。
自分の体が親によって(または神によって、地球によって)作られた作品であることを知り、とても大切なものなのだと理解します。
子供たちは自分の体を大切にしているからこそ、それを使って喜びを表現するのです。
これこそまさに、命の芸術と言えるでしょう。
では子供たちがその「心の器」を披露するのはどんなときでしょう?
【水辺で遊ぶとき...】

近年ではこういった光景もだいぶ少なくなりましたが、ふた昔ほど前までは都会の親水公園でも子供たちは裸になって遊んでいました。(国によっては現在もお馴染みの光景ですね)
この写真は背景にビルが見えるので住宅街でしょうか。
子供たちは大人に見られても気にしない、大人たちは裸の子供を気にも留めない、そんな大らかさが昔の人々にはありました。
【診察や身体検査のとき...】


この写真はいつ頃のものかは不明ですが、戦前の子供の身体検査はおもに全裸でおこなわれていました。
ただし学校での身体測定は男女共に下着を穿いていました。
昭和も半ばになると男子はブリーフのみ、女子は下着の上下でしたが、今は男女とも体操着の上下でしょうか?
肌が隠れていると身体の異常に気付くのも遅れてしまいます。
【データを取るとき...】

1937年頃、当時の米国農務省と大学が協力し、医学的見地から子供の服を作成してそれを国民が簡単に購入できるようにするためのプロジェクトを立ち上げました。
この写真はそのプロジェクトに関連し、人体測定学の教授が子供の体形を計測しているときの様子です。
このような学術的な人体データも、正確に取るためには裸でおこなう必要があります。
【芸術作品のモデルになるとき...】

これは1907年に撮影された、フランスの彫刻家アリスティド・マイヨール(Aristide Bonaventure Jean Maillol/1861-1944)の彫像制作風景。
粘土でブロンズ像の原型を作っているところですが、人体に忠実な作品を作ろうとすればやはりモデルは欠かすことができません。
これは画家の場合も同じですね。
【役者として演技をするとき...】

これは映画かテレビドラマの撮影シーンでしょうか?
子役といえど、物語によっては裸で演技しなければならない場合もあります。
裸での演技に関しては、日本の子役よりも海外の子役のほうが堂々としている印象があります。
もっとも近年では自粛が進み、表現の幅がどんどんと狭くなっているのですが。
美を学び、人の美を知り、自分の美を社会の文化に役立てる。
私がそうであったように、子供たちにとって美術という教科は道徳心を学ぶための教科でもあります。
「子供の美術離れ」「美術教育の危機」と言われて久しい現代ですが、美術の授業数はあまり減らさないでほしいものですね。
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