ダビデという名の勇敢な少年

    david_by_michelangelo.jpg

    美術に興味がない人でも「ダビデ」または「ダビデ像」という言葉は聞いたことがあると思います。
    世界的に有名な男性彫像のひとつですが、おそらくダビデと聞いてほとんどの人が思い浮かべるのはこの「ミケランジェロのダビデ像」でしょう。

    File:'David' by Michelangelo Fir JBU002.jpg
    クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

    イタリアの彫刻家、ミケランジェロ・ディ・ロドヴィーコ・ブオナローティ・シモーニ(1475-1564)が1501年に制作した、高さが5メートル以上もある巨大な大理石像。
    イタリアのアカデミア美術館に収蔵されています。

    下から見上げたときに美しく見えるよう上半身が大きめに作られていたり、リラックスした姿勢でありながら表情の険しさが緊張感を漂わせるなど数々の特徴を備えており、数あるダビデ像の中でも最高傑作と言われています。

    数ある・・・そう、ダビデ像は一種類ではありません。
    これまでに様々な彫刻家が様々なダビデ像を制作してきました。

    david_donatello.jpg

    これはイタリアの彫刻家、ドナテッロ(1386-1466)が1440年頃に制作したダビデ像。
    イタリアのフィレンツェにあるバルジェロ美術館が所蔵しています。

    ミケランジェロのダビデが青年であるのに対し、こちらは少年。
    洒落た帽子をかぶり誇らしげなポーズをとり、討ち取った敵の兵士ゴリアテの頭を踏みつけています。

    File:David Donatello 01.JPG
    クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


    jean_etienne_chaponniere-david.jpg

    これはフランスの彫刻家、ジョン・エティエンヌ・シャポニエール(1801-1835)が1834年に制作したダビデ像。
    フランスのジュネーブの公園に設置されています。

    巨大なゴリアテの頭を踏みつけ、神に感謝するかのように天を仰ぐ若きダビデ。


    andrea_del_verrocchio_david.jpg

    これはイタリアの彫刻家、アンドレア・デル・ヴェロッキオ(1435-1488)が1470年頃に制作したダビデ象。
    ヴェロッキオはあのレオナルド・ダ・ヴィンチの師です。

    非常に軽微な衣を身につけ、何故か乳首のところが花のようになっています。
    この像も足元にゴリアテの首がありますね。

    File:Museo pushkin, calchi, verrocchio, david 01.JPG
    クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


    ここまで読んで「そもそもダビデって誰?」「ゴリアテって誰?」と思った人もいるでしょうから、簡単に説明します。

    紀元前1000年頃、今から3千年ほど前の話。
    羊飼いから身を起こして初代イスラエルの王サウルに仕え、サウルの死後ユダで王位に就くとペリシテ軍を撃破して全イスラエルの王となった、40年ものあいだ王として君臨した人物がダビデ(David)。

    かたや「ゴリアテ」(Goliath)とは、サウル王治下のイスラエルと敵対していたペリシテ軍の巨人兵士の名前。
    身長は約2.9メートルと記されており、身にまとう鎧は約57キログラム、手にする槍は先の部分だけで約7キログラムあったそうです。

    ダビデがまだ羊飼いの少年だった頃、イスラエル人とペリシテ人は戦争状態にありました。
    ペリシテ軍最強の巨人兵士であるゴリアテは、しばしばイスラエル軍の前に現れては挑発を繰り返していました。

    『おまえらの勇者と1対1で決着をつけようではないか。もしそっちが勝てばペリシテはおまえらの奴隷となってやる。ただし俺様が勝てばおまえたちはペリシテの奴隷だ!』
    と朝夕の2回、40日間にわたってイスラエル兵たちを脅し続けました。
    イスラエルの兵士たちはゴリアテに恐れをなし、戦いを挑もうとするものは一人もいませんでした。

    ある日ダビデは、イスラエル軍に従軍していた兄たちに食料を届けるために戦陣を訪れました。
    ダビデはこのゴリアテの挑発を聞いて大いに怒り、イスラエル軍を率いていたサウル王にゴリアテ退治を申し出ます。

    サウル王は初めは難色を示しましたが、他に手段がなかったためダビデの出陣を許可しました。
    ダビデはサウル王から授けられた鎧と剣を一度は身にまといますが「慣れていないので歩くこともできない」とそれらを脱ぎ捨て裸になり、羊飼いの道具である杖と、布でできた投石器と、川で拾った滑らかな5個の石という軽装でゴリアテに挑んだのでした。

    突進してくるゴリアテと待ち構えるダビデ。
    ダビデが勢いよく放った石は見事にゴリアテの額に命中し、ゴリアテはうつぶせに倒れました。
    ダビデは剣を持っていなかったので、倒れたゴリアテに駆け寄り剣を奪い、その剣でゴリアテの首を一刀両断!

    ペリシテ軍はゴリアテの予想外の敗退により総崩れとなり、イスラエル軍はダビデの勝利に歓喜の声をあげました。
    この戦いによりダビデの名声は広まり、サウル王の側近として仕えるようになったのです。

    ダビデ像と呼ばれている彫像のほとんどは、このゴリアテ退治のシーンを表現したものです。
    ではその他の彫像も見てみましょう。

    david_et_goliath-mercie.jpg

    これはフランスの彫刻家、アントナン・メルシエ(1845-1916)が1873年に制作したダビデ像。
    フランスのトロワ近代美術館で展示されています。

    切り落としたゴリアテの顔を無慈悲に踏みつけ、剣を鞘に収めようとしているスタイルの良いダビデ。

    File:David et Goliath-Mercié.JPG
    ライセンス:パブリックドメイン


    opernhaus_zurich_-_utoquai.jpg

    これはスウェーデンの彫刻家、イヴァール・ヴィクトール・ジョンソン(1885-1970)が制作したダビデ像。
    スイスのチューリヒにあるオペラハウスの庭に設置されているブロンズ像です。

    こちらのダビデは片膝をついて踏みつけています。

    File:Opernhaus Zürich - Utoquai 2010-09-13 19-00-16.JPG
    クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


    hugo_kaufmann-david.jpg

    これはドイツの彫刻家、ヒューゴ・カウフマン(1868-1919)が制作したダビデ像。
    このダビデは討ち取ったゴリアテの頭を持ちながらも、どこか悲しげな佇まいで遠くを見つめています。
    勝利した安堵感か、己の行く末を憂いてのことなのか・・・。


    多くのダビデ像が戦闘後の様子を表しているのに対し、一番上のミケランジェロのダビデ像だけは戦闘前の様子を表しています。
    右手に石を持ち、投石用の布を肩にかけたミケランジェロのダビデ像は、今まさに巨人兵ゴリアテに戦いを臨まんとする緊張感までもが見事に再現されており、物語のイメージとしては最も正確なのかもしれません。

    しかし気になるのは当時のダビデの年齢です。
    旧約聖書の記述によると、ダビデは父エッサイの第八子、つまり8番目の子供。
    イスラエル軍に従軍していた兄たちに食料を届けるために戦陣を訪れたということは、当時のダビデは従軍できる年齢ではなかったということです。

    また、ミケランジェロのダビデ像以外はほとんどが無毛なので、そうなると12歳くらいだったと考えるのが妥当ではないでしょうか。
    ミケランジェロのダビデ像はどう見ても青年の姿であり、少年には見えませんね。

    数あるダビデ像の中ではドナテッロのダビデが最も実際の姿に近いような気がしますが、それよりももっとイメージに合う画像がありました。

    unknown_realdavid.jpg

    これは某写真家による写真作品。
    残念ながら詳細は不明ですが、タイトルを付けるとしたら間違いなくDAVID(ダビデ)となる作品だと思います。

    石を握りしめ、片足に体重をかけ、真剣な表情で横を見つめる姿はまさに臨戦態勢のダビデ。
    ミケランジェロのダビデ像と同じ雰囲気を漂わせています。
    しかし年齢的に見ると、当時のダビデにより近いのはこちらのほうかもしれません。

    また、ダビデ少年はイスラエル民の証である「割礼」を受けていたとされているので、そういう意味でもこちらのほうが似ていると言えますね。(ミケランジェロのダビデ像には割礼の痕がない)

    巨人ゴリアテもまさかこのような少年に殺されるとは思ってもみなかったでしょう。
    油断大敵、小よく大を制す、驕れる者は久しからず。
    現代も教訓となる故事のひとつです。
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    1999年に「The Light of Smile 笑顔の灯り」という子供の笑顔をテーマにしたサイトを開設。
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